ブギーポップは笑わない/上遠野浩平/電撃文庫

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))


ヴァルプルギスの後悔』新刊が面白かったので何度目かの再読開始。第4回電撃ゲーム小説大賞<大賞>受賞作。当時は「青春ホラー」とかそんなカテゴライズをされていた気がする。


自分が読み出したのは『歪曲王』が出た辺りだったと思う。ご多分に漏れず、これが初電撃文庫。当時表紙デザインに垢抜けたものを感じはしたけど、本編はというと、むしろ古い(≠古臭い、つまらない)とすら感じた、というのが正直なところ。「不純異性交遊」「グループ交際」といった語彙や、県立でも中くらいの進学校という割に、受験に対してやけに過敏な高校生たち(いやそれはお前が不真面目だったからだ、といわれればそこまでだけど)。そして何より、今でも語り草になっているブギーポップの「君たちは、泣いている人を見ても何とも思わないのかね!」という第一声に象徴される、全体を貫く熱さ。上遠野浩平というと、あとがきでなんだか小難しいことを偉そうにぶつぶつ語ってる奴で、そいつが書いてる話もなんだか暗くて空虚で……という偏見が、一部では驚くべきことにいまだに持たれているけど、少なくともこの一作目に限ってはいたって前向きな終わり方をしている。それは確かに、一部のキャラクターに、なんというか「ゲンダイシャカイニマンエンスルクウキョナココロノワカモノタチ」とかそんな感じの印象を受けなくもない(読み直してて、「青春」を「せかい」と読ませててちょっとびっくりした)。けれど、ブギーポップは、物語はそれを否定する。「笑うのは君たちの仕事だ」と叱咤激励する。それらの言葉は至極真っ当で、というか真っ当過ぎて、なんだか自分には10年も20年も前の青春ドラマを観ているかのように感じられた。だから、まさに当時の「現代病」的なものの神輿として祭り上げられてた「エヴァ」と繋がっている、と言われてもあまりピンと来なかったし、逆に後年、作者が愛読しているという「ジョジョ」の1〜3部を読んで、えらく納得したりもした。或いは、その古さが逆に新鮮だったんだろうか。


あれから10年。シリーズも巻を重ねて、ブギーポップのキャラクターも様変わりした。このシリーズがライトノベル業界に与えた影響も、「斬新な構成」「ファンタジー一色だった当時の業界のカラーを学園物に塗り替えた」「主人公像を一新した」など色々言われていて、それらに頷いたり頷かなかったりするのだけど、「古い」という印象は今も変わらない。ただ、この「古さ」が当時も今も変わらない、というのはなんだか凄い気もする。