目覚めた絵描きを解き放て。電撃文庫
先日ラノベにおけるイラストレーター交代劇という文章を書いたんだけど、ある意味その逆の話。
そういえば、シリーズ一本書ききる時に若干寂しく思うのは、「もうこの人と組めないのか」と思う事。絶対不可能、ではないにしても、シリーズで組んだ絵師さんは、印象強い分、新作では編集さんが組ませたがらないのね。
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上記の通り、ライトノベル業界においてひとつのシリーズを終わらせた作家が次回作で同じイラストレーターと組むことは、まあ特筆するほど少なくはないにせよ、そんなに多くはない。と思う。ではこの業界の外ではどうかというと、不勉強ながらよく知らない、というのが正直なところなんだけど。ことライトノベルにおいてはシリーズ物がメインで人気が出ればすぐに巻数が二桁に及んでしまう、という辺りも榊先生の言うような傾向に拍車をかけているのかなーと思ってる。
でも、電撃文庫(とMW文庫)はそういった意識をあまり持っていないように見える。
- 上遠野浩平×緒方剛志「ブギーポップ」「ビートのディシプリン」「ヴァルプルギスの後悔」他
- 時雨沢恵一×黒星紅白「キノ」「アリソン」「お茶が運ばれてくるまでに」他
まず、キャリアも10年を超え、電撃文庫を代表する作家であるこの二人は、少なくとも単行本化された作品において他のイラストレーターと組んだことはない。上遠野浩平は全ての作品がリンクしているから、という理由もあるかもしれないけど。時雨沢黒星コンビは、いつだったか「時雨沢恵一黒星紅白コンビ、○○万部!」みたいな感じで部数を発表したことがあって、AMWもブランドとして意識してるのかなーと思った。
- 阿智太郎「僕の血を吸わないで」「僕にお月様を見せないで」「いつもどこでも忍2ニンジャ」「骸骨ナイフでジャンプ」
- 阿智太郎×スズキユカ「九官鳥刑事」「おちゃらか駅前劇場」
- 入間人間×左「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」「探偵・花咲太郎」「多摩湖さんと黄鶏くん」
- 入間人間×ブリキ「電波女と青春男」「トカゲの王」
- 周防ツカサ×彩季なお「ギャルゲーマスター椎名」「レトロゲームマスター渋沢」
- 周防ツカサ×森倉円「インサイド・ワールド」「ユメ視る猫とカノジョの行方」
- 三上延×純桂一「シャドウ・テイカー」「天空のアルカミレス」
- 三上延×椎名優「モーフィアスの教室」「偽りのドラグーン」
- 土橋真二郎×植田亮「ラプンツェルの翼」「アトリウムの恋人」
- 土橋真二郎×白身魚「扉の外」「ツァラトゥストラへの階段」
- 成田良悟×エナミカツミ「バッカーノ!」「ヴァんぷ!」「世界の中心、針山さん」
- 成田良悟×ヤスダスズヒト「デュラララ!!」「バウワウ!」「Mew Mew!」「がるぐる!」「5656!」
- 川上稔×さとやす「都市シリーズ」(「パンツァーポリス1935」「エアリアルシティ」除く)「AHEADシリーズ」「GENESISシリーズ」
- 藤原祐×椋本夏夜「ルナティック・ムーン」「レジンキャストミルク」「アカイロ/ロマンス」
- 岩田洋季×佐藤利幸「灰色のアイリス」「護くんに女神の祝福を!」「めしあのいちにち」
- 鈴木鈴×片瀬優「吸血鬼のおしごと」「吸血鬼のひめごと」「海辺のウサギ」「サンダーガール!」
- 田中哲弥×此路あゆみ「大久保町」「やみなべの陰謀」「悪魔の国からこっちに丁稚」(翻訳)
- 竹宮ゆゆこ「わたしたちの田村くん」「とらドラ!」
- 古橋秀之×前嶋重機「ブライトライツ・ホーリーランド」「タツモリ家の食卓」
- 秋山瑞人×駒都えーじ「イリヤの空、UFOの夏」「ミナミノミナミノ」
- 在原竹広×GUNPOM「桜色BUMP」「時の魔法と烏羽玉の夜」
- 鷹見一幸×Himeaki「小さな国の救世主」「リセット・ワールド」
- 伏見つかさ×かんざきひろ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」「ねこシス」
- 佐藤ケイ×さがのあおい「天国に涙はいらない」「ロボット妹」
- 御堂彰彦×タケシマサトシ「12DEMONS」「付喪堂骨董店」
- おかゆまさき×とりしも「撲殺天使ドクロちゃん」「森口織人の陰陽道」
- 高畑京一郎×衣谷遊「タイム・リープ」「ダブル・キャスト」
- 紅玉いづき×磯野宏夫「ミミズクと夜の王」「毒吐き姫と星の石」
- 久住四季×甘塩コメコ「トリックスターズ」「ミステリクロノ」
- 杉原智則×瑚澄遊智「頭蓋骨のホーリーグレイル」「ワーズ・ワースの放課後」
- 甲田学人×三日月かける「断章のグリム」「夜魔-奇-」
- ハセガワケイスケ×七草「しにがみのバラッド。」「みずたまぱにっく。」
- 葛西伸哉×芝美奈子「ようこそ観光ダンジョンへ」「小次郎破妖録」
- 神野淳一×成瀬裕司「シルバー・ウィング」「シルフィ・ナイト」
- 鳥海永行×西村博之「光の騎士伝説」「聖・八犬伝」
- 佐竹彬×千野えなが「φシリーズ」「七不思議シリーズ」
- 志村一矢×椎名優「月と貴女に花束を」「麒麟は一途に恋をする」
- うえお久光×藤田香「悪魔のミカタ」「ジャストボイルド・オクロック」
- 坂入慎一×凪良「シャープ・エッジ」「F」
- 間宮夏生×白味噌「月光」「変愛サイケデリック」
- 有里紅良×夢来鳥ねむ「小説・HAUNTEDじゃんくしょん」「アンダーヘブンズ・ふぁみりぃ」
一部作品で組んだコンビはこんなところ。並行してやっている場合もひとつのシリーズ完結後に再結成された場合も、一作目に組んで二作目は違う人と組んで三作目に再会、というパターンも含む。ただし原作つき及びタイトルから明らかに前作の続編だと分かるもの(新〜とか〜2とか)は除く。
なお、自分としては「シャナ」を完結させた高橋弥七郎が次回作でいとうのいぢと組むかが気になります。
それで、他のレーベルなんだけど、意外なことに、電撃ほど多くはなくとも結構複数作品組んでるコンビがいて驚いた。全部挙げるのはちょっと面倒なのでやらないけど、目についたところだと
- 富士見ファンタジア
- スニーカー文庫
- 乙一×羽住都「失踪HOLIDAY」「きみにしか聞こえない CALLING YOU」「さみしさの周波数」
- ファミ通文庫
- MF
- SD
- 一迅社
- 十文字青×ま@や「ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜」「ヴァンパイアノイズム」「絶望同盟」「萌神」
- ソノラマ
辺り。特に今ほどシリーズ物志向が強くなかった頃のソノラマ・コバルト・スニーカーで、1巻完結物を得意とする作家なんかは、結構続けて同じイラストレーターと組んでる確率が高い気がする。当時は作家もイラストレーターもレーベルもそれほど多くないから、選択肢が少なかったってのもあるか。自分の中で電撃が印象に残ったのは、特に人気作品を手がけたコンビが多かったから?
個人的な感触で言うと、同じコンビで続けて、というのはあんまり好きくないです。だってつまんないじょん。せっかくの新作なのに、作家もイラストレーターもたくさんいるのに、人員固定されてることが多いエロゲメーカーでもないのに、また同じコンビって。
ただ電撃に限って言うと、そういう傾向があるにしても、同じコンビを続ける可能性も閉ざしはしないよ、というくらいで、別に売れたら必ず次も同じコンビで、という感じでもないので、個々の組み合わせはともかく、レーベルの方向性としてはあえて否定的になることもないのかなー。ファン心理的にも、このコンビの新作をまた見てみたい!っていうのはあるだろうし。「小学星」餅月望と黒田bbが再タッグを組むという「ヒロイック・リトル・シスターズ (仮)」、これから楽しみです。
と、記事タイトルをひっくりかえす結論が出たところで、〆。お粗末。