カドカワノベルズ創刊の辞

今までカドカワノベルズってあんまり手を出したことなかったんだけど、読んでみたらなんだか面白かったのでここに載せておく。

発刊の言葉


一冊の小説は、読者だけの試写会を提供し、読了するまでの間、好みのキャスティングで、自由な映像を楽しませてくれる。
雑誌がヴィジュアルになり、、ヴィデオ・ディスクやカセット・ヴィデオの発達、コミック文化の普及によって、近未来は活字離れになろうと予測されてきた。しかし、小説自体が劇画的要素を取り込み、映画やテレヴィ等の映像との連動によって、かえってベストセラーを生む結果となった。活字は映像と融合するのではなく、活字それ自体の娯楽性で融合するのである。
歴史ロマンの「平家物語」、恋愛小説の「源氏物語」、SFの原点「竹取物語」、そしてそのすべてを網羅した「南総里見八犬伝」。物語という文芸形態は、つねにどの時代でも、庶民の情感にフィットした最高のエンターテインメントだった。
角川文庫を創刊して三十年、小社はここに、新たに現代の物語を追及するカドカワ・ノベルズを創刊した。このシリーズによって、映像を超える小説集団を公開して行きたい。


一九八一年十一月 角川春樹


メディアミックスを是とする角川らしい。ここから『宇宙皇子』やらなんやらが生まれたのもむべなるかな。スニーカー文庫の創刊の辞としてもあんまり違和感なさそうだけど、あれはあくまで角川文庫からの派生なので、巻末に掲載されている創刊の辞も同じもの。


うぃきぺどさんで調べたところ、角川映画第一弾の『犬神家の一族』が1976年、『セーラー服と機関銃』が1981年、『時をかける少女』が1983年。んで、角川のアニメ映画第一弾『幻魔大戦』も1983年。「読んでから見るか、見てから読むか」。いや、なんとなく。