ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦/角川書店

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ


小学4年生のぼくたちが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。勉強家であるぼくは、仲のいい歯科医院のお姉さんの協力を得て、この不可思議な現象を研究することに決めた。第31回日本SF大賞受賞作。

ぼくが住んでいるのは、郊外の街である。丘がなだらかに続いて、小さな家がたくさんある。駅から遠ざかるにつれて街は新しくなり、レゴブロックで作ったようなかわいくて明るい色の家が多くなる。天気の良い日は、街全体がぴかぴかして、甘いお菓子の詰め合わせのようなのだ。


とても爽やかなジュヴナイルSFだった。単に小学生が主人公だからってだけなのかもしれないけれど、今まで読んできたこの人の作品に共通していた愛され非モテオーラとでも言うものが大分薄めで、好感が持てた(まあこの子もこしゃまっくれてはいるんだけど/あと他の作品も好きではあります)。実は森見作品の中で一番好きかもしれない。日常から一足飛びに非日常に接触するんじゃなくて、小学生は小学生なりに町を探検したり身近なものを自由研究の題材にしたり、そういったことの延長線上に非日常があるので、不可思議現象にするりと入っていきやすい。また新興住宅地っぽい町の情景描写は今までになくとても端整で、強くイメージ力を喚起させられた。これアニメでも実写でも映像化したいっていうクリエイターは多いだろうなあ。主人公がお姉さんのことばかり気にするので嫉妬する同級生女子とかもいい味出してました。