新 風の大陸/竹河聖/ハルキ文庫

新 風の大陸 (ハルキ文庫)

新 風の大陸 (ハルキ文庫)


風の大陸」は富士見ファンタジア黎明期を「宇宙一の無責任男」シリーズと共に支えた大河ファンタジー小説だ。滅びに瀕した古代の大陸を救うため、イノセントな美青年のティーエ、男装の少女ラクシ、傭兵のボイスが旅をする様を描く。FTとしてはRPG文化の影響を受けておらず、魔法(的なもの)も「設定」が明文化されない、神秘的なものとして描かれている。


ドラゴンマガジンでは1988年の創刊号から連載開始(ファンタジア文庫の創刊ラインナップの一角でもある)。いのまたむつみのイラストもあって人気を博し、アニメ映画化などもされた。終盤は(「スレイヤーズ」のヒット以降のレーベルの路線転換もあって)DM誌面で明らかに浮いていたにも関わらず連載され続けていたが、文庫10巻収録分で太陽帝国編に突入し、影のあるおかっぱ美青年皇子カリスウェンを中心とする宮廷劇が長引いたことから脱落した読者も多かったようだ。2005年にはやや打ち切り気味に連載終了。翌年発売された文庫28巻で完結。「スレイヤーズ」を差し置いて(あれはイメージ的にもそういうのが合わないってのはあるだろうけど)四六版の愛蔵版なんてものが出ていることから、富士見にとって特別な作品であることは間違いないだろう。


決定版 風の大陸〈1〉

決定版 風の大陸〈1〉


……が、その正統な続編が何故か2010年にハルキ文庫から刊行された。何故かっつーか、今の富士見と読者層が合わないからだろうけど。他にもハルキ文庫は笹本祐一RIO」や押井守パトレイバー」など同じくファンタジア文庫黎明期の作品の新装版やらなんやらが刊行されているし、繋がりのある編集者でもいるのかもしれない。イラストはいのまたむつみが継続。本編の数百年後の世界を舞台に、再び滅びつつある大陸を三人の若者が救う旅が始まる。性別は違えど、イノセントな主人公・ルティに彼の守護者二人っていうパーティー構成は一緒。今のところ前作との繋がりはそれくらいしか思いつかないけど、彼らの旅の目的地がティーエの育ったラテルの山だというので、そこに何かあるのだろう。ありがちだけど、ルティがティーエの血を引いてるとかね。ただこのシリーズも前作同様長期化しそうなのが不安。


しかし、この人の文章自体は欠片もラノベっぽくなく、アニメや漫画の影響を受けているとも思えないのだけれど、どうしてアクションシーンで気の抜けるようなカタカナ擬音を連発するかなー。あと獏先生みたいな会話での鸚鵡返しもやめてほしい。もう数十年こうだから今さらどうなるとも思わないけど。