富士見ファンタジアの黄金期は、大雑把に三つの柱に支えられていた

気がする。すなわち、

主に自前の新人賞で発掘した作家が書く(出自とか作品としての形態とかが)普通の小説


ライトファンタジーとしては神坂一スレイヤーズ』、秋田禎信オーフェン』、榊一郎棄てプリ』、鏡貴也『伝勇伝』等。やや本格寄りというか、スタンダードというか、あまり奇を衒わない系のファンタジーとしては竹河聖風の大陸』、ひかわ玲子『バセット英雄伝』『百星聖戦紀』、五代ゆう『はじまりの骨』『機械仕掛けの神々』等。どう分類としていいのかいまいちよく分かんないのが冴木忍の諸作品。どうでもいいけど、この系統のファンタジーってなんで書き手に女性が多いんでしょー。


ファンタジー以外の枠……SF或いはスペオペとしては吉岡平『無責任』、神坂一『ロスユニ』、星野亮ザ・サード』、庄司卓『ヤマモトヨーコ』、現代劇/学園物としては、麻生俊平『ザンヤルマ』、雑賀礼二『リアルバウト』、賀東招二フルメタ』、築地俊彦まぶらほ』、鈴木大輔ご愁傷さま二ノ宮くん』、 山門敬弘『風の聖魂』等。

TRPGTCG、PBMといったものを主軸とする企画の小説/リプレイ


グループSNEによる『ソードワールド』『モンスター・コレクション』『バトルテック』、遊演体による『蓬莱学園』等。小説の書き手としては、安田均水野良北沢慶山本弘清松みゆき新城カズマ等。自分は全くの門外漢なので、詳細は玄人の人に聞いてください……。


富士見のソードワールド関連書籍は2005年8月には100冊を越えてたらしい。ランキングなどを見るに『リウイ』等の色んな意味で例外的な作品を除いても、安定した売上げがある、のかな?

同時多発的メディアミックス企画の一端としての小説


伊藤和典横手美智子押井守らによる『パトレイバー』、黒田洋介・長谷川菜穂子・梶島正樹らによる『天地無用!』とその派生シリーズである『魔法少女プリティサミー』、あかほりさとるによる『セイバーマリオネット』、舞阪洸による『火魅子伝』など。最後のは1999年に開始して、アニメもゲームもいまいちぱっとしなかった印象があるのに、いまだに小説が続いてて売れてるという事実。『トライゼノン』なんてのもあったけど……。


基本的にはアニメやゲームに主導的に関わった人が執筆している。そうじゃなくて、原作がまずあって小説は二次的な産物、ってのは富永浩史の『シャドウスキル』とか、枯野瑛の『Wind -a breath of heart-』とか。『wind』は、発売当時「おおー富士見もエロゲノベライズやるようになったのかー」と思った記憶が。


ちなみに、公称で『セイバー』は少なくとも200万部以上、『天地無用』は300万部以上出てるらしい。この後も巻数を重ねてるので現在はもっとか。他のノベライズだと、ファミ通文庫のテイルズが累計150万部、ガンパレが100万部とか。気になるのはスニーカーのガンダム関連だけど、角川公式で検索すると72冊出てきた。下手をしたらこれだけで1000万部くらい行ってそうな気がしなくもない。


余談。そろそろ「セイバーマリオネット」が見たくなったので、続編をやろうと企んでいる。らしい。ホントなら、エヴァスレイヤーズに続いて90年代大懐古時代突入ですね。

で、何が言いたいのかというと

刊行数的にも部数的にも読者の印象的のも富士見の主流があくまで一つ目だというのは間違いないとは思うけど、これらは内容的にも相互に作用し合っているため、どれか一つだけ抜き出して語る、というのは片手落ち。だから、読んだのはほとんど一つ目の端っこに限定されている自分がこのレーベルについて語る場合、最初から足りないものがあるのですよ、という話でした。別にこれは富士見だけに限った話じゃなくて、電撃を包括的に語ろうとすればG`s文庫のギャルゲーノベライズ、スニーカーを語ろうとすればガンダム関連抜きには語れないのと一緒なんだけどね。