魔術士オーフェンはぐれ旅 キエサルヒマの終端/秋田禎信/TOブックス

  • 元々、完結時から構想はあったが、蛇足だろうということで付け足さず⇒ファンタジア文庫20周年企画として原稿執筆。が、諸事情により企画が消滅し、原稿はお蔵入りに⇒秋田が自サイトに半年かけて連載。この時は「あいつ」「こいつ」「そいつ」など人名が代名詞に置き換えられていた⇒連載が話題を呼び、他に書き下ろしなどを追加して「秋田禎信BOX」として限定発売⇒新シリーズに合わせ今回再販、というややこしい経緯を辿った作品。
  • クリーオウがヒロインなんてありえない!と思っている人こそ「キエサルヒマの終端」を読むべきで主張したように、クリーオウが名実ともにヒロインになるための過程が綴られていくんだけど、同時に1、2部ではあくまで一個人に過ぎなかったオーフェンのところに大は貴族連盟やキムラック、魔術士同盟、小は無謀編のキャラまで全てが収束していくというお話でもあったり。
  • 「扉(下)」のオーフェンの旅立ちは希望に溢れたものだと思っていたので、クリーオウの言うような「変わってしまったから一緒にはいられない」というような心情は読み取れていなかった。が、ラストの「来たか」からするといつか追っかけてくるかも、と思っていたからこそ今は一緒にはいられない、ということだったのかもしれない。
  • 東部編の展開は混迷を深め、言い回しもまわりくどいものが多かった。終盤は一転、矢継ぎ早に結論までたどり着いたわけだけど、この「終端」はそれに輪をかけて分かりやすく、贅肉というものがまるでない。東部編でぼかされていたことにぽんぽん回答が出て行くのは痛快でもあり、少し寂しくもあった。
  • 「魔術士」オーフェンであるのにこの巻だけ魔術が一度も使われていない理由はいまだによくわからない。
  • BOXに掲載されたものにイラストが追加。まるで劇場版のような全員集合表紙絵(コミクロンやハーティアはこれが表紙初登場!槍持ってるところを見るとアザリー討伐の時の格好?三つ編みかどうかはちょっと確認できないな)の厚塗りのかっこよさは流石なんだけど、モノクロイラストは目の描き方とかちょっと変わってていまいちだったかも。「BBB」は後半読んでないんだけど、今の絵柄ってこんな感じなのかしら。
  • ファンタジア文庫の旧装丁を模したアニメイト特典の掛け替えカバーはその遊び心もさることながら、その実用性が素晴らしい。新装版もそうだけど、表紙カバーが真っ黒だから、ちょっと触っただけでも指紋がくっきりついちゃうのよね。外ではともかく本棚に並べる時は書店でもらったカバーとか取っ払う自分としては、この掛け替えカバーはとてもありがたかった。