寝取りと寝取られとそれをみる私たち

エロゲー原作のOVA『秘湯めぐり』(asin:B000EBDFUW)を観る。旅館の若女将と、彼女のことが好きな従業員の主人公。若女将の方も満更ではないものの、彼女は、客としてやってきたナンパ男に流されるままにごにょごにょ……という、いわゆる寝取られ物。多分30分という枠の中で話をまとめなきゃいけないからか、主人公の描写が薄いせいかあまり感情移入することもなく、その手のネタとしてはソフトな感じで、特にその系統が好きというわけではない、というかむしろ嫌いな方かもしれない自分が見てもあんまり抵抗なかった。なかなかのクオリティで、ここ最近では久々の掘り出し物。


で、原作ゲームにちょっと興味が出てきて、ちょっと調べてたら驚いた。原作ではOVA版の従業員ってほとんど影も形もないのな。主人公は、ナンパ男の方。そのためか、OVAではただ口がうまいだけのDQNって印象しかなかったんだけど、もうちょっと常識があるというか共感できなくもない感じになってて、若女将が彼に惹かれていく過程も、まあそれなりに普通の純愛路線エロゲーちっく寄り、というか。要は普通にフラグ立てていく感じ。まあ、OVAの方でも従業員は視聴者に視点を貸すぐらいで、メインはむしろ抗い切れない若女将の内面描写だったんですけど。彼女がナンパ男とくっついた直後に、どっちも借金のカタだかなんだかでヤクザに連れ去られてひどいことになっちゃうし。


なんでそういう構成にしたかっつーと、OVA製作したひまじん(正確にはその子ブランド?のAmour)が寝取られレーベルとして名を馳せてるってのもあるんだろうけど、にしても、なかなか思い切ったことやるよなあ。エロゲーでなくてもそうだけど、語り手の交代って、そのゲームを根幹から変えることに等しいはずなのに。ガチ純愛ゲーなんかだと大ブーイングだろうなあ。でも、ユーザーの視点となる主人公を変えて普通のエロゲーを寝取られゲーに、って発想は悪趣味だけど面白いかもしんない。例えば、『Clannad』の勝平シナリオとか、サブヒロインの子が主人公と結ばれなかった救済としてぽっと出キャラとくっつかせるってことでボッコボコに叩かれてたけれど、あれも勝平視点にしてればまた色々変わったのかなあとか。いやそれはもう既に『clannad』ではないか。……ん?勝平シナリオって朋也視点じゃないっけ?

この作品、<視点切替>なるシステムで同じシーンでも「大切なひとをパートナーの眼前で犯す男(主人公)」・「自分の愛するひとが目の前で犯されているのに何も出来ない男(サブキャラ)」・「大事な人が見ているのに犯されて感じてしまう女(ヒロイン)」の3つから選択できるようになっていて、寝取られマニアが望んだ立場(サブキャラ)でプレイ可能なのです。

http://homepage3.nifty.com/khf11063/other/irregular2.htm


さすがエロゲ業界。柔軟すぎる発想。自分が考えるようなことなんて、既に実践されてるのね。


まあ、何にしても、ある一つの事件を描くにしても語り手次第で寝取りになったり寝取られになったりする、という考えてみなくても当然のことを実感したのでした。