果実の森/夢枕獏/あんず堂

果実の森〈上の巻〉文芸篇

果実の森〈上の巻〉文芸篇

果実の森〈下の巻〉コミック・SF篇

果実の森〈下の巻〉コミック・SF篇

  • 著者が(自著含め)小説や漫画、ノンフィクションなどについて語っているエッセイを集めたもの。「きわめて上質な恐怖には、必ず美的なものが潜んでいる」とか「文章を見たときの視覚的なリズムを意識して書いてる」とか「私小説は書かないつもりだった」とか氏の創作に対する姿勢も伺えて興味深かった。「あなたが落としたのはこのお下劣文学大賞ですか?それともこの直木賞ですか?」とか。
  • 「キマイラ」1巻あとがきでソノラマで書くに当たって「SEXシーンにも手を抜かない」って言ってたけど、結果的にはそういったシーンは(他のノベルス作品とかに比べれば)あんまりなかったなあ。物語上の要請がなかったからだろうか。
  • 「蒼黒いけもの」(asin:4257765437)は世にも珍しくソノラマ文庫谷川俊太郎に序文を書いてもらっている。ああでも最初は単行本だったのか。
  • 石川賢版「闇狩り師」って「小学四年生」で連載されてたんだ……
  • 主人公が特殊な能力を持たずインフレもしないということで「ベルセルク」を絶賛してたけど、今の「ベルセルク」を獏センセはどう思ってるんだろう。
  • 獏ちゃん以外の作品も含めたアンソロジー「てめえらそこをどきやがれ!」など、「エロスとバイオレンス」で塗り固められた獏ちゃんのイメージを出版社がタイトルに利用して売り抜けようとする姿勢には疑問を表明したりもしていた。読者に対しては結構「エロスとバイオレンスの夢枕獏」を演じようとしてるところあるとは思うんだけどね獏ちゃん。しかしそれならソノラマ文庫→ハードカバー→ソノラマノベルスという版型の混乱にも抗議して欲しかった……。自分は最近読み始めたので特に損はしてないけどさ。
  • ひどゆき先生とぶく先生は仲いいなあ。出版社のパーティーかなんかでひどゆき先生と間違えて寄ってきた「魔界都市」ファンの女の子に「実はあの二人はほんとにデキてるんです。外谷さんを挟んでぐちゃぐちゃどろどろの三角関係なのです」とデタラメを教えたり。時代やレーベルといったものを代表する作家で、ここまでセットで語られるっていうのも珍しいんじゃないかしら。この二人の801本とかやっぱりあるのかしら。イメージとしてはぶく先生のヘタレ攻めリバ可で。
  • 男でありながら少女漫画を理解できるという誇らしさ、そのこっぱずかしさ問題がこんなところで言語化されていたとは!/しかし獏ちゃんに限らないけど24年組をやや特権化しすぎる人が多い気がする。
  • エロスとバイオレンスを書き続けて十数年、お下品文学大賞をいただいた獏ちゃん。泉にそのトロフィーを落としてしまう。そこから出てきた妖精に「あなたが落としたのはこのお下品文学大賞と直木賞、どちらですか?」と聞かれて……