「機械の仮病」第2回 in 別冊文藝春秋

別冊 文藝春秋 2009年 07月号 [雑誌]


3段組16ページ。前回と同じく、機械化病なるものが蔓延しているものの、実害はなく、ほとんどの人は表面上その存在を意識することなく日々を過ごしている。そんな世界が舞台。今回は小五の息子を持つ主婦が語り手。息子の同級生が立て続けに自殺し、刑事が話を聞きに来る。どうやら自殺した二人は機械化病を患っていたらしいが……?


奥さんが可愛かった。といっても外見の描写とかは全くなくて(意識してラノベを書いてない時の秋田は大体そうだけど)、なんというか、その性格のフツーさが。旦那さんは忙しくてもちゃんと奥さんのことを気にかけてくれてるし、子どもはそろそろ反抗期で親と出かけてるのを渋ったりもするけれど、それをからかって「デートしている気分だ」と楽しめるくらいの余裕はある。かといって変にベタベタもしてない。疲れた女度も低め。こういう主婦の内面を描いたものってなんとなくもっとどろどろしてそうという偏見があるけど、これは文体の淡白さもあってえらくさっぱりしてるし。むしろどろどろというかグロテスクだったのは井戸端会議とか保護者会とかそこら辺か。……まさか秋田が「幸福な家族」なんてものを描くとは思わなかった。ティッシとフォルテの夫婦だとこうはいかないんだろうなー。コギーと旦那なら……旦那の詳細が分からないからどうとも言えないか。ラストのあの台詞には平穏が崩れそうな予感がしたけど、まあ、この家族なら大丈夫だろう。


秋田にとって初の女性一人称でもあったんだけど、よくこういうのさらっと書けるなあ。実際女性読者の人の意見はどうか知らないけど、感情の流れがえらい自然。作者の性別を感じさせなかった。


これまでの語り手は、恋人をなくした彼氏、子どもの同級生が自殺したお母さん、と来てるけど次はどんなかな。秋田お得意の兄弟姉妹?それとも、病院で機械化病について専門的に接している医者、とか?最終話では唯一この連作短編に共通して登場しそうな二人組の刑事(考えてみれば男の凸凹コンビってのも『オーフェン』『ベティ・ザ・キッド』と3組目だ)が、実は俺たちも既に機械頭になっていたんだー!で〆。ベタ過ぎますか。


以下本題とは関係ない秋田の話。

  • 読んでてオーフェンを連想する話ハガレンDTB銀魂辺りはオーフェンを連想する人が多いみたい。俺調べで。
  • オーフェン雑メモ2不殺主人公が成長して第2部では魔人型主人公に、で「種」を連想。どちらもちょこちょこ観た程度なんだけど。つくづくあの番組は俺内90年代を引きずった作品だわ。
    • 『でろでろ』は今週号のラス前話が、あのギャグ世界がサザエさん時空のモラトリアム空間でそこから脱しようとしてた辺りにも無謀編マインドを感じなくもなかった。
  • 『エンハウ』アフレコインタビューその1その2
    • 「無関心を装いながら実はフリウをすごく気にしてる、好きな女の子についついいじわるしちゃう男の子のような不器用なスィリー。」その発想はなかった。
    • ウルペン役藤原啓治のコメントは意外に核心を突いてる気がする。
  • ロッテーシャやその他単発ヒロインも基本的に呼ぶ時は「君」だったし、口では性差廃絶主義者なんて言いつつ、なんだかんだで女性には柔らかく接してるねオーフェン


あと秋田禎信BOXのメルマガ第3号によると草河遊也椎名優描き下ろしのイラストがつくことが決定したらしいです。