H2/あだち充

H2 1 (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)H2 17 (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)


思い入れ、という点では野球漫画、いやさスポーツ漫画としては1番かもしれない。

  • 本格的な思春期に入る前には、自分にも学生生活に対する、なんというか健全な憧れとでもいうものがって、それが恋愛を絡めたスポーツ漫画を読む、という形で具現化した、気がする。それがあだち充作品というのは、なんというかベタと言えばベタだけど、他には大島司『シュート!』とか西山優里子ハーレムビート』とか。……あ、久米田先生が大好きな『なぎさMe公認』もこの路線だ。石渡治『LOVe』とかも好きだった気がするけど、もうあんまり覚えてない。
  • 最初から実績を持ってる最強の主人公、という点では『るろ剣』なんかと同じ時代の流れなのかしらん。でも一方で同時期に主人公が無能力状態から始まる『ガンバ!Fly high』とかも好きだったわけで、嗜好として偏ってたわけでもない、のかな。
  • 周囲の人間に話を広げつつも、最初から最後まで比呂と英雄の対決の枠を一歩も出なかったのは、ある程度余裕のある連載枠を与えられるサンデー連載ならではだったのかなあ、という気がする。トーナメントで勝ち進むに従ってどんどん強い敵が出てきてインフレしてって……というのではなく、駆け引きや時の運でもって勝負を決するというのでもない。まあ、比呂も英雄に勝てるなら大会NO.2投手でもなんでもいい、というようなことを言ってた気はするしなー。
  • とにかく比呂も英雄も主役意識が高かった。「やっぱり神様は俺と英雄の対決を見たいらしい」とか。千川の野球愛好会が正式な部に昇格する過程からしてそう。いきなり有名人に入ってきて打倒明和一高を目指すことになる。その間、元々愛好会で野球を楽しんでた人たちの気持ちとか全く描かれない。後々の「あれはあれで楽しそうだったからな」「後輩の俺たちに好き放題言われて嫌なこともあっただろうに」っていうような比呂の科白が全てを表現してる気がするなー。いや批判したいわけじゃないんだけど。なんというか、凄いよなあとは思う。ナチュラルな主役意識が。
  • だからこそそれまで脇役として描かれてきた木根の完投にはぐっと来るものがあるんだろうな。でも、その一方で野田が自分の限界を見極めて「自分が比呂に付き合ってやれるのは甲子園までだ」なんて言ってたり。そこら辺が魅力と言えば魅力。
  • 試合の肝心な部分をさらっと球場の外の風景なんかに実況の吹き出しを重ねて流すことでリズムを生み(?)、次回に向け余韻を残したりしてるのもよかった。常に全開気味の『おお振り』とは対極よなー。