『かのこん』に見るライトノベルの未来

  • かのこん』の原作は、実はそんな全編エロエロしてるわけじゃない。毎巻そういうシーンがあるのは事実だけど、分量的には多くてせいぜい全体の2-3割くらいで、あとは普通にバトルやらギャグやら。本筋(!)とは関係ないシーンも多く、あくまでサービス要素。ただ、ちょっとアブノーマルなだけ。
  • そのエロも独特の面白いぼかし方で書いていて、プレイの内容自体はド変態でも馬鹿馬鹿しい雰囲気が漂っていて、健康的。どっちかというとオヤマ!菊之助とかルナ先生とかあっちの系譜?「口でかぷこん。舌でなむこ。 ああ、ちずるのさきっちょがどんどんすくえあえにっくす。」とか、ルナ先生の体を地図に見立てて「おおっ、なんと急な等高線だ!」(台詞はうろ覚え)とかやってる辺りと同じ匂いを感じた。それを映像にすることで、ああいうあからさまな、下品な作品ができあがっちゃった。バトル展開も「空気を読んで」極力排除することで、よりその印象は強化された。同じ下品でも、自分が期待してたのは「いぬかみっ!」とかああいう方面だったんだけどなー。
  • ところで、先のgyaoなどでの放送中止の件では、媒体によるエロ規制の温度差、というのを改めて実感させられた。
  • そもそもエロ漫画の成年マーク等もあくまで出版社の自主規制によるもの(その自主規制も出版社によって基準がまちまち)らしい。ある出版社から過去に出たものが、復刊された際には(モザイクをアレコレしたりして)マーク付きになっていたり、シリーズ途中から成年マークがついた、なんて例もある。一部青年誌と一部エロ漫画雑誌との境界線は限りなく近く、そして小説にはそれすらない。専門の出版社を作って専門のレーベルから出版して、と区分するのに分かり易い形になってるだけ。時々都条例の有害図書に指定されてたりするみたいだけど、それはあくまでイラストの問題っぽい。
  • 年齢制限なしで出来ることの限界値としては、活字>>>漫画>>>OVA>>>TVアニメ>>>ゲームくらい?
  • だからというわけじゃないけど、ライトノベルもしくは活字のエロって実は狙い目なんじゃないかなーと素人考えしたりする。ジュブナイルポルノまではいかない、具体的には青年漫画雑誌くらいのレベルの奴。偉い人たちに目をつけられるのが怖いなら青年向け専用のレーベルを……って、ノベルスレーベルは大体そんな感じか。特にエロが満載という話も聞かないけど。
  • ただ『かのこん』は、DVD1巻の初週売上げが6,175枚(オリコン。同週の『狼と香辛料4(限定パック)』が6,906枚、『灼眼のシャナII 第VI巻』が7,179枚、『レンタルマギカ アストラルグリモア 第VII巻(限定版)』が1,909枚)とそれなりに奮ってる割には、原作が伸びたという話を聞かないんだよなー。大阪屋500位以内にも4月の放送開始直後に既刊がちょっと入ってるくらいだし、順位見る限り5月発売の最新第10巻もそれまでと比べて爆発的に売れてるわけでもなさそう。みんな映像の方だけで満足ってことかしらん。放送終了後も売れ続けた『狼と香辛料』との、そこが違いか。ってそっちの方が予想外だった気もするけど。ラノベサイトの人たちの意見も「好きだけど地味なので大ヒットは無理」って意見が大勢を占めてたし。
  • 菊地秀行夢枕獏を筆頭にソノラマ時代は相手にしている世代が幅広かった。両者がノベルスへも進出し、大成功を収めたことからもそれは伺える。それから、『ロードス』『フォーチュン』『スレイヤーズ』等で一旦下がったライトノベルの読者平均年齢が、少子化等の影響によってまた上がってきてるんじゃないか、ということ。あとがきによると、深見真が『武林クロスロード』で目指したのも山田風太郎、鳴海丈、平井和正秋津透辺りらしいし。このタイミングで『フォーチュン・クエスト』が児童文学レーベルから出版されているのも何かの象徴だろうか。いや、あんまり。
  • どうでもいいけど、『かのこん』の肌のテカテカした質感は『新・最終痴漢電車』を思い出させた。まさに脂身。