潮騒/三島由紀夫/新潮文庫

潮騒 (新潮文庫)

都会の少年はまず小説や映画から恋愛の作法を学ぶが、歌島にはおよそ模倣の対象がなかった。そこで新治は観的哨から燈台までのあの貴重な二人きりの時間に、何をなすべきであったか、思い出しても見当がつかなかった。ただ痛切に、何かをせずにしまった、という悔恨の念が残ったのである。


書かれた時期としては1954年の話。