PSYCHO+,封神演義,他/藤崎竜

藤崎竜作品集  1 サイコプラス (集英社文庫―コミック版)

藤崎竜作品集 1 サイコプラス (集英社文庫―コミック版)


フジリューを初めて知ったのはこの作品がジャンプに連載されていた頃だった。当時を思い返してみると、自分はこの人を美少女描きとして認識していた気がする。あの頃はギャルゲ―・エロゲーは存在すら知らなかったし(『ときメモ』が94年出しなー)、アニメをそういう目で見るということもしていなかった。漫画では、松本泉の全盛期は大分以前だし、萩原一至桂正和はえっち過ぎて恥ずかしい。なにより、何らかの非日常的な要素を軸に女の子との関係を描くという、ある意味今日のラノベで共有されているような話が、ジャンプでは珍しかった気がする。だから、終盤いきなり話が地球規模に飛躍したことに驚いた記憶がある。当時は10週打ち切りなんて知らなかったし。……とにかくそんなわけで、この漫画はヒロイン水の森ちゃんの魅力によってのみ成り立っていたと言っても過言ではないのだった。


Worlds―藤崎竜短編集 (ジャンプ・コミックス)

Worlds―藤崎竜短編集 (ジャンプ・コミックス)


サイプラの後に遡る形で初期短編に触れる。これがまた少年誌らしからぬダークな作風に奇妙な絵柄のものが多く、思春期真っ盛りだった自分にクリティカルヒット。中でも胡蝶の夢的なエピソードの「WORLDS」、壮大な世界の広がりを感じさせた「TIGHT ROPE」、気の弱い人間の影がその人とと入れ替わる「SHADOW DISEASE」辺りが好き。今見るとそう奇抜な話でもないんだけど、完成度の高さは変わらない。あとがきに続編の予告が載ってて、中でも「TIGHT ROPE」とかすげー読みたかったんだけどなあ……。


封神演義 完全版 1 (ジャンプコミックス)

封神演義 完全版 1 (ジャンプコミックス)


で、そういうところに魅力を感じてたもんだから、いきなり王道少年漫画をやりだした『封神演義』は、多くの初期藤崎ファンがそうであるように、最初の評価はあんまり高くなかった。アクションやるには明らかに絵に動きがないし。ギャグもいまいち面白く感じられなかったし。大好物のハンバーグとか、所々黒いところも見せつつも、やっぱりフジリューのそれまでのノリと王道少年漫画分がミスマッチのように感じられた。……でも、数年経って読み返してみたら、これが面白かった。別に虚心坦懐に読んだというわけでもなく、初読時の評価が間違ってたとも思わんけど、まあ、タイミングかなあ。


Dramatic irony (ジャンプコミックス)

Dramatic irony (ジャンプコミックス)


その後、上記の短編集なども読んで、まあ面白かったんだけど、初期短編に感じたような驚きを感じることはできず。最早自分はこの人の読者たりえないのかなあ、という思いも拭えなかった。以降、2回ほど新連載を持ったけど、どちらも目滑りがして真面目に読むことは出来なかった。が、『屍鬼』がジャンプスクエアで開始し、今なら読めるかなあ、という思いもなんとなく高まってきている。