マーメイド/マーガレット・ミラー 汀一弘:訳/創元推理文庫

マーメイド (創元推理文庫)


両親をなくし、年の離れた資産家の兄にその家族と暮らしているクリーオウ。失踪する直前、彼女は人と違う自分の権利について知りたくて弁護士事務所のアラゴンの元を訪れていた。後日、アラゴンはクリーオウの兄に依頼され、彼女を探すことになるが……


『これよりさき怪物領域』同様、多分あの小娘の元ネタの一つ。金髪だし、良家の子女だし。マモーみたいな頭の渦巻きがないのが惜しかった……っつーのは冗談としても、『オーフェン』、特に東部編でのあの小娘を知っている人間が読むとなんともいえない気持ちになること請け合いな話だった。ロス・マクの『さむけ』に登場するマクレディさんやマギーさんは名前を拝借しただけかなあと思ったんだけど、これは、どこまで疑っていいのやら。例えば、『オーフェン』におけるあの小娘ってやりたい放題な割に賢い、というか聡い故に終盤ではああいうことになってしまったのだけど、こちらは時たま同じような鋭い(ようにも聞こえる)言葉を吐くにも関わらず決定的に他人の自我を考慮に入れてないが為に周囲の評価は正反対なところとか、どこまで意図的なのかなあ、とか。もっと具体的には、あの小娘が最終巻で拳銃を手に取ったこととか、アニメ第1期の1話冒頭で何故か人魚さながら深夜に湖で泳いでて陸に上がってきたことすら、この作品の影響を受けているような気がしてしまう。……いや、まあ、最後のは確実に関係ないと思うけど。あっちには秋田がほとんど関わってないと聞いたし。


……自分は小娘のあの結末を決してバッドエンドだとは思ってないけど、元ネタがこういう話だとああいう展開になるのも必然だったのかなあ、と思ってしまうところはあった。肯定するにせよ否定するにせよ、あの結末に何かを感じた人は読めばいいじゃない。読んで自分の味わったなんともいえない気持ちを共有すればいいじゃない。訳者が違うからか、『これよりさき怪物領域』より読み易く、尚且つ台詞回しもより秋田っぽい気がしたので、そういう意味でもオススメ。