センセイの鞄/川上弘美/文春文庫

センセイの鞄 (文春文庫)


清水マリコのことを評して「もし川上弘美が好きなら必ず読むべき作家」という言葉があるらしく、それならその逆、川上弘美を評して「もし清水マリコが好きなら必ず読むべき作家」というのも成り立つのかしら、という考えから読んだ。小泉今日子主演でドラマ化もした谷崎潤一郎賞受賞作。


私は、人にはその都度年齢にあった作品がある、という意見はアホらしいと思っている人間なのだけど(どんな作品でも得るものはあるだろう、たとえ難解で全然理解できなかったとしてもそれは一つの経験だろう、というような意味で)これは今読むべき作品ではなかったなあ。もうちょっと酸いも甘いも噛み分けた年齢になってから読みたかった。なんというか、いい作品だけに、若い内にこういう作品世界にどっぷり浸かっちゃうのは今の自分的にあんまりよろしくない気がするんだよなー。いやまあ、10年、20年経って自分が立派な大人になっている、という想像はまるで出来ないのだけど。それこそ、この作品の主人公のようにいつまでも子供時代を引きずっていそうな気もする。


30代後半独身女性と、その高校時代の恩師である老人との淡い心の交流。レイプから始まる恋、ならぬ居酒屋から始まる恋、なんて言葉があるのかもなあ、なんて思った。アルコールによる酩酊状態と、現実と虚構の境界の曖昧さ、とかなんとか。つまみなんかもいちいち美味そうで、読んでると一杯やりたくなる。


清水マリコ云々については、この作品に限って言えば特にどうとは思わなかったかな。