侵略する少女と嘘の庭/清水マリコ/MF文庫J

侵略する少女と嘘の庭 (MF文庫J)

うちの食器で、家の冷蔵庫にあったうどんを、今日初めて口をきいた(と思う)女の子が、部屋で食べている。不思議な気分だ。MSや雑多ないろいろ散らかった牧夫の中に、いきなり、小さい女の子が居場所を作って住み着いたみたいだ。白いうどんが唇をつるつる通過する音がした。

「またね」
りあは細い身体をくるりとまわして、はねるように階段を降りていった。振り向かない細い髪が背中でサラサラ揺れている。わがままなくせにサラサラすんな。牧夫は意味のない八つ当たりをした。


嘘三部作三作目。可愛いあの娘はキラー悪魔。前作、前々作より主人公の思春期/童貞指数が高めで、女の子に対する視線もそれらしいものになり、また積極的にLOVE寄せが為されていた。なんか、こういう基本的にそれっぽくない小説に出てくる女の子の可愛らしさに自分は弱いなあ。主人公の趣味であるガンプラ作りを受け入れる過程も嫌味なく描かれていて、好感が持てた。


ただ、前二作と違って不思議な女の子の不思議要素が不思議なままに終わらず、結構生々しい背景が明らかになるにつれ、なんというか「可哀相な女の子」感、とでもいうようなものが浮き彫りにされていって、そこはちょっといやーんな感じだった。作者の思惑がどうこうってより、そういうことを考えちゃう自分がね。前二作の終盤の展開を追いきれなかったことを考えると好材料と言えなくもないんだけど、それが魅力といえなくもなかったので、難しいところ。バランスのよさで言えば二作目が一番好きかな。