ぼくたちのアニメ史/辻真先/岩波ジュニア新書

ぼくたちのアニメ史 (岩波ジュニア新書)


『アトム』の時代からの歴史の生き証人である辻真先回顧録


岩波ジュニア新書から出てて、近所の図書館でも児童書のコーナーに置かれているんだけど、こちらの感想にある通り、注釈なしに単語がぽんぽん出てきて、「ジュニア」新書というレーベルからすると少し不親切なところもある。が、不勉強な自分でも面白く読めるだけの魅力はあった。


アタックNO.1』は少女漫画ならではの目の大きさにアニメーターが手を焼いたとか、今はメディアミックス全盛だけど、氏が小説を書き出した当時は「映画はともかくテレビになっても本の売れ行きは関係ありません」と言われたとか、60年代中盤には戦争もの日常生活ものスラップスティック大人向け……と、既にジャンルの多様化をこわごわと模索していたこととか、『サザエさん』では初期プロデューサーにより、流行語は勿論「景気が悪い」「家計が厳しい」などの身につまされる話は存在しなかった……といった話が印象に残っている。


そんな過去の話だけでも充分価値があるけど、この人の凄いところは今なお現役でアニメや漫画、ライトノベルを受容していること。現在毎週欠かさずに観てるのは『銀魂』で、他にも『ひぐらしの鳴く頃に』の放映中止に怒り、『かみちゅ!』の発想に驚き、『機動戦士ガンダムSEED』にハマり、『ロザリオとヴァンパイア』は月刊少年ジャンプの頃からの読者だと明かし、『電脳コイル』を絶賛する77歳……。それでも自分の視聴量は「巨象の一部を撫でているに過ぎない」と自覚していて、だからこそアニメに贈られる賞の審査委員なども辞退したことや、感想がいい意味で一視聴者としての視点を忘れてないのも好感度高い。西尾維新や奈須きのこ、冲方丁辺りも読んでて筒井康隆が最高齢のライトノベル作家なら、この人は最高齢のライトノベル読者だ、と言えなくもなく。


公式サイトにもアニメや映画、小説の感想はぽつぽつ上げられているけど、どこかの雑誌……オトナアニメか、web媒体ならアニメスタイル辺りにでも定期的な掲載枠を持たないかなあ。