TVアニメ殺人事件/辻真先/朝日ソノラマ文庫

TVアニメ殺人事件 (ソノラマ文庫 29-J)


推理小説を始め少女漫画、鉄道、特撮SFと様々なサブカルチャーを題材にしてきたスーパー&ポテトのソノラマでの最終作は、TVアニメが題材。作者がNHKの元プロデューサーで、黎明期からのアニメ脚本家であるため、現場の描写が実に濃密。この作品が発表されたのは1980年。まだまだ子ども向けとしか見られていなかったTVアニメ。権力を握っているのは玩具会社などのスポンサーで、現場への見返りは少ない。。それを不満に思い、時間と金のある若者に向けて大衆的な作品を作ることで、自分たちの地位向上を図ろうと野心に燃える若手アニメーター。この頃既に存在していた声優の追っかけと、制作側よりも詳しく作品のことを把握しているファンジンなどなど。既にアニオタとしての一般教養課目の単位取得を諦めてる自分にもわかり易く、面白い。


宇宙戦艦ヤマト』が1974年。その劇場版第一作が77年。『機動戦士ガンダム』が79年。そういった流れを汲んでいる作品、なのかな。


まだおたくという言葉も普及しておらず、宮崎勤の事件もまだまだ先のことで、作者が制作サイドにいる人間であるということを考慮しても、アニメファンは「ちょっと変わった人たち」ぐらいの認識で描写されている気がした。その一方で、ポルノアニメを制作し、その出来のよさを熱弁するアニメーターに、「でも、アニメでしょ?」と結構引き気味な主人公の姿なんかもあり、笑ってしまった。