魔王伝(1)〜(3)/菊地秀行/祥伝社ノン・ノベル

魔王伝〈1〉双鬼編―魔界都市ブルース (ノン・ポシェット)魔王伝〈2〉外道編 (ノン・ポシェット)魔界都市ブルース 魔王伝〈3〉魔性編 (ノン・ポシェット)

変わったヒーローなんぞゴロゴロしているご時世です。ニヒルだの、女に弱いだの程度じゃ一発でつまらないと言われてしまいます。
そのかわり、ジュブナイルの経験から言って、ここさえ乗り切れば、つまり、読者が容易に感情移入できるヒーローさえ造形できれば、後はしめたもので、読者はちゃんとついてきてくれるし、滅多に離れません。


同じジュブナイル出身組でも獏ちゃんの『魔獣狩り』の場合は、なんというかこう、濃密なアダルトなものを書くぜ!って気迫が文体からひしひしと伝わってきて、自分にはそれが少々気負いすぎのように感じられ、少々疲れた(でも、後年の作品を見る限り、文体は『キマイラ』とかみたいなのに統一したみたい?)んだけど、こっちはソノラマで書いてる方とそんなに変わらなかった。といってもこれはジュブナイルそのまんまの文体を持ってきたっていうより、むしろジュブナイルにおいても文体自体は特に意識して変えてなかった、ということになるんだろう。だからまあ、セックスとバイオレンスが気にならなきゃ、『D』の読者は『魔界都市ブルース』も読めるし、その逆も然り、となる。多分。つーか、キャラクター造型に関して言えば、Dとかよりせっちゃんのほうがよっぱど。あとは、イラストか。獏ちゃんの方のイラストの人は柳澤達朗って人で、劇画調っつうか、アニメ・漫画文化とはあんまり縁がないように見えるけど、こっちは『グインサーガ』とかで有名な未弥純。これは、作品の質によるものなのか、作品の発表時期の差によるものなのか。


あー、エロに関して言えば獏ちゃんよりこっちのが性に合う、かな。『魔獣狩り』は雑誌連載で毎回絡みを入れなきゃいけなかったのに比べ、こっちのは書き下ろしだから無理があんまりないってだけかもしれんけど。