フォーチュン・クエスト(5)(6) 大魔術教団の謎/深沢美潮/角川スニーカー文庫

フォーチュン・クエスト〈5〉大魔術教団の謎 上 (角川文庫―スニーカー文庫)フォーチュン・クエスト〈6〉大魔術教団の謎 下 (角川文庫―スニーカー文庫)


"復活屋"という職業について。古今東西、ファンタジーRPGの常識やお約束を輸入した小説は数多くあるものの、いわゆる"蘇生"の呪文については、まあそんなの普通に使えたら緊張感が薄れるし、どれもゲームに比べて難易度が高いとか成功率が極端に低いとか縛りをきつくしてるみたい。なんだけど、そんな中でもこの作品は比較的そこら辺の制約が緩いように思えた。作中の"復活屋"は独学で、10数年かけて術を身につけたらしい。"復活屋"志望者は多いものの、そのほとんどが志半ばで挫折していくそうだけど、作中の描写から考えると"奇跡"というほど手の届かないものでもなさそう。復活にかかる費用については、術者にもよる。低所得者が一生かかっても手にできないような金額を要求することもあれば、相手の経済状態を考慮してくれる者もいるらしい。復活が成功するための条件は二つあって、「その遺体の状態と死者のカルマ」。遺体は新鮮であればあるほどよくて、死亡してから1日ごとに成功率が1%下がっていく。カルマはそのまんま。生前に善行を積んでいればそれだけ成功率が上がる。その上で、平均的な成功率は3-4割。体力も元通りになるためにはかなり時間がかかる。……どうだろなあ。劇中の世界観も考慮しないといけないし、好みの問題もあるけど、これでもまだ強力すぎるように感じるなあ。


それと、この巻を読んでてもう一つ思いついたのは、魔術が実際に存在する世界で、それをベースにした宗教がどれだけ神秘性を持てるか、ってことで。作品の世界設定としては、"魔力"を持たない人間はいくら鍛錬しても魔術を使えないってことになってて、この巻で登場した"大魔術教団"はそこを魔力がない人間でも魔術が使えるようになる、という触れ込み。あれだけ魔術の体系化が進んでる世界なら、ああいうインチキってあっさりばれそうな気もするけど。寝食を惜しんで働かせれば脳内麻薬が出てきてなんだか悟りを開いたような気分になって教義にもなんにも疑問を持たなくなる、って辺りは納得した。『ザンヤルマ』の宗教ネタほどではないけど。