ファンタジアバトルロイヤル2006春号

SHI-NO 楽園-family-/上月雨音

まあ、大まかな印象は1巻読んだ時と大体同じなんだけど、

しかしもちろん、彼女は社交辞令というものを理解していた。だからこうやって無口になるのは、比較的近しい人物に対してのみで、たまに会ったりする程度の人や目上の人に対してはちゃんと対応したりする。つまり、それだけ僕が彼女にとって身内に近づいてきているという証拠なのだろう。それは純粋に嬉しかった。


てな辺りが、この手のキャラとしてはちと珍しいなーと思いました。つまり、この手のキャラって、大体無口・無表情という属性が1セットになってて、話が進むにつれて徐々に打ち解けていき、それらが解決される、というのが肝なんですが、この作品の場合、「無口」というのは主人公が特にクリアすべき問題ではないと認識されている。知った仲なら別に口を利かなくてもいいって、それ普通の人じゃんという気がしなくもないですが。一方で、主人公はヒロインの笑顔を見たいと願っているわけです。


ちょっと志乃ちゃんの行く末に興味が湧きました。イラストもいい感じに癖が抜けてきたし、これはもう少し様子見てみようかな、どうしようかな。

星のファム・ファタール 恋心の墓標/内藤渉

第9回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞者の人、復活。ちなみに同期組は、榊一郎あざの耕平など。ほぼ同じ時期にデビューして片や月産ペースで現在50冊以上、片やデビュー作のみ……。まあ早く書きゃいいてもんでもないけど、これはなかなか……。つうかこの人の仕事歴並べたらなんか凄いな。飛び方が。


で、今回のは上にもある通り、6年前に1回載った奴の再開後第1弾。どうやら私も読んでいたようで、聞き覚えのある設定がちらほらと……。だからかどうか分からないけど、微妙に古い感じ。元々、デビュー作の「カレイドスコープの少女」からして、真っ当なボーイ・ミーツ・ガールで真っ当なライトファンタジーをやっていて、良くも悪くも癖がない人だな、ともは思ってた(さすがに6年前の話なので、曖昧です)けど……うーん。とりあえず11歳ょぅι゛ょは11歳ょぅι゛ょであるというだけでなく、もうちょっと何か売りの一つにするとかしてもいいんじゃないかな、と思いました。

パノのもっとみに冒険/秋田禎信

1回目と比べるとちょーっとストレートになったなあという気がしなくもないけど、うん、いい話でした。


これに関しては、絵を描く人(というか原作者だけど)と文を書く人がいい出会いしたなーと思います。きゆづきさとこの方は、今までの仕事を詳しく知らないので断言はしないけど、少なくとも文の方から見るとそう。最近のこの人の書くものって、発想の転換の仕方とか言葉遊びとか、信者じゃない人にとっては一筋縄じゃないところがあるんだけど、「パノ」は絵に包容力があるので何やってもそれを許容してしまうというか。


絵本っぽい、童話っぽいライトノベルというと真っ先に浮かぶのが「キノの旅」。絵師の黒星紅白とは秋田禎信も仕事したことがあるけど、秋田×黒星で組んでこういうのを作ってくださいと言われたとこでできないだろうし、時雨沢×きゆづきでもできないでしょう。当然なんだけど。なんていうか、本来交わるとは思ってなかった線が交わったからこその、組み合わせの妙。どういう経緯でこの二人が組んだのかは分からないけど、いいお仕事してます。