花とアリス

花とアリス 通常版 [DVD]


"花"と"アリス"は仲がいい二人の女子高生。花は通学電車の中でよく会う男の子が気になっていた。とあるきっかけから、その男の子、宮本先輩と同じ部活に入ることができた花。ある日、先輩が頭を打って記憶が一時期混乱するんだけど、花はそれをチャンスと思い「先輩が私に告白したの、覚えてないんですか?」と嘘をついてしまう。結果、二人は付き合うことに。それにアリスが巻き込まれて話が始まる。


一応粗筋を載せてはみましたが、この話に関してはあまり意味がないかも。一本筋の通った物語よりは、とにかく二人の意外な図太さ、あざとさ、不安定さ、なにより可愛さを楽しめばいいと思います。実際、脚本だけ見てくと最後に向かって収束していく感じもないし、ひどくとっ散らかっててアンバランス。元々、この作品がネットで公開された4つの短編を再構成したものだっていう過去もあるんだろうけど、"花"と"アリス"という二人の女の子(実際には、アリスの方が大分前に出てるけど)を色んな視点から撮りたいがためだけにこの映画を作った、って気がする。それだけ二人の仕草、やりとりが見てて面白い。基本的にローテンションな掛け合いは、観客を爆笑の渦に巻き込むというより微笑ましいといった類のものでした。あ、ローテンションといえば基本的にゆったり進む話の上、130分という少し長い上映時間なので、あまり肩肘張らずに観るのがいいと思います。


しかし、作品から伝わってくる監督の二人への思い入れは異常。調べたら、現在40代前半?そらまだまだ枯れるには早いけど、この年であんな少女漫画全開の話を作れるとは。いや、逆に年食ったからこそなのかも。若い内からこんなノスタルジックなものを作れちゃうとしたら、それはそれで怖い。二人の戯れがすごい身近にいそうな感じで錯覚しそうになるんだけど、でも絶対にいない。この世界観を壊すような生々しさを排除してるから。


そんな監督の視点がよく分かるシーンが、二つ。これはネタバレになっちゃうんだけど、まず最後の方、アリスが雑誌モデルのオーディションでバレエを踊るシーンがある。制服のスカートのままで。その場にいた人たちは徐々に彼女のバレエに引き込まれていって、最終的に彼女をモデルに抜擢する。それは純粋に彼女のバレエを評価してのことなんだろうけど、偶然その場にいなかった彼のマネージャー?は状況を聞いて、さも納得したかのように「あー……パンチラ?」と言ってしまう。


この映画では、女子高生をそういう目で観るように観客を誘ってる(ように思える)シーンが幾つかある。バレエ教室のシーンなんか、明らかにそう。他にもひらひら揺れるスカートとか、雨でずぶ濡れになった髪とか、その他諸々。でも監督は、そういう目で見てほしくないと言う。正直、「パンチラ」発言の意図ってのは最初全然読み取れなかったし、今でも明確じゃないんだけど、要は下世話な想像をしてほしくないってことなのかな。フェチ、というか。下半身直結のエロじゃなくて頭で楽しむエロというか、そんなん。知らない。


でも、全然違うのかもしれない。そう思えるのが、二つ目。アリスが、別居している父親と久し振りに再会し、「デート」するシーン。ここは、最初打ち解けてくれない娘にプレゼントを贈ったり、不器用ながら世間話をしたりで最後には「次にいつ会える?」とせがまれるまでになる、っていうので、私がこの映画で一番好きなところ。ここでも、件の「パンチラ?」発言と似たような、「……やらしい」という台詞が2度出てくる。1度目は、久し振りに会った娘が高校に入学したと聞いて、「制服姿が見たい」と父親がなにげなく言ったことに対する台詞だ。2度目は、いつの間にか携帯電話でメールが出来るようになった父親に対して。ここら辺を見ると、監督が花とアリスを、父親の視点で撮ってるんじゃないか……という気がしてくる。年齢的に見てもそんな違和感ないしね。そこに「やらしい」視点なんか存在しない。このシーンも、監督がアリスの父親に感情移入してるからこそ、こんないいシーンに出来上がったんじゃないかなー。


私の文章だけだと明らかに言葉が足りないので、もう少し詳しいところは下のリンク先で。


http://d.hatena.ne.jp/ruchida/20041130
http://d.hatena.ne.jp/hey11pop/20050515/p3