定本 物語消費論/大塚英志/角川文庫

定本 物語消費論 (角川文庫)


80年代末に大流行した「ビックリマンチョコレート」から、人々は<小さな物語>=個々の商品としての物語の向こうに見える<大きな物語>=世界観?を求めているのだ、とした一冊。同作者の「キャラクター小説の作り方」はジャンルへの私の思い入れが強かったせいと、娯楽を通じてオタクを右翼がどうした天皇がどうしたという話に引きずり込もうという意図があまりにあからさまであまり好きにはなれなかったんだけど、これは結構楽しめました。単行本の刊行が15年前で、扱ってる題材の割にはあまり古臭くもなく、むしろ「物語を消費する過程でこれからは誰もが情報を発信する側に回る」(あとがきで作者自ら言及)という現代のインターネット社会の到来を予見してたのは素直に結構すげえなあと。東浩紀動物化するポストモダン」ではオタク文化において<大きな物語>が失われ、記号の使い回しだけでなんとかやっていってるなんて話があったと思いますが、そんな状況がまだ到来する前の、私がまだ小学生だった80年代のオタク文化を理解する上での助けになるんではないかと。
余談。本書の中で「究極のおたくコミック」として萩原一至BASTARD!!」が取り上げられてるのにはちょっと隔世の感があった。今となってはこういう文脈で取り上げられることはあまりないように思うけど、当時は勢いあったんだねえ。