番狂わせ 警視庁警備部特殊車輌二課/押井守/角川春樹事務所
- 作者: 押井守
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2011/01/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 「機動警察パトレイバー」において主人公たちが属する「特車二課」の名前をタイトルに冠してはいるけれど、文字数的にはおおむねサッカー薀蓄小説。ストーリーは、サッカー親善試合のテロ予告に特車二課が総力を挙げて立ち向かう、というもの。
- 主人公の名前が泉野明(いずみのあきら/旧シリーズでは「いずみのあ」と読んでいた。男性)、他にも後藤田隊長(旧シリーズでは後藤隊長)とか帰国子女の香貫子(香貫花)、大田原(太田)、御酒屋(進士幹泰)とか出てきて、あー真っ向から名前使うのは問題あったのかなーと思ったら、あの特車二課から数えて三世代目に当たる人たちの話らしい。旧シリーズから継続して登場するのはシゲさんくらい?各キャラの造形は旧シリーズメンバーを邪推を持って眺めたらこんな感じになりました、というところ。遊馬に当たる人物は何故かいない。作中世界ではパトレイバー自体が「趣味の産物」「ロボットなのに有人というだけで役立たず」と非難を浴びて無用の長物になりつつあり、特車二課も辛うじて組織として維持されている状態。個性豊かで偉大だった初代(と三代目は思い込んでいる)と比べて、どうしても見劣りする三代目として怠惰な日々を送っている。……なんて書くと夢のない話だけど、本作はそこから、じゃあ彼らが生き残っていくためにはどうしたらいいかが、サッカーの戦術に喩えて語られる。レイバーも最後にはなんだかんだで見せ場があったり、三代目の悲哀とプライドが描かれたり。押井守のパトレイバーという作品に対するひねくれた愛情が伝わってきた。旧シリーズのメンバーをもじったようなネーミングは、多分その辺りを強調したかったんだろうな。
- 作中では再三にわたって、人員配置の重要性が説かれる。高校時代サッカー部に入っていた泉は試合を行うチームに合流し、内部から調査を行った。その点も功を奏しテロは防がれ、特車二課は一躍名を挙げる。が、それはそれとして事件の後、この三代目メンバーは解散してしまう。泉は地元のサッカーチームに選手として転進し活躍。他のメンバーの第二の人生は三者三様。これも然るべき人員配置を行った結果だったのかな。彼らと同じように、レイバーも特車二課がなくなったとしても、働く場所を変え役割を変えどこかで生き残っていくんだろうか……。できればそう願いたい。