ハンターダーク/秋田禎信/TOブックス

ハンターダーク

ハンターダーク


闇に覆われた地下世界。その全ては、空から降ってきた瓦礫で構築されている。街を闊歩する機械人たちとて、それは例外ではない。主人公の「ハンター」はこの世界に秩序を取りもどすため、自身のアイデンティティを探すために仲間たちとともに戦う。カートゥーンSFニンジャアクション。

ザ・ハンターとその一党、鬼の強さの五人組。
恐れを知らぬ馬鹿者が、恐れるならばそれもよし。
彼らは自ら名乗り出す。
闇の五人が求めるは、掴めぬ夢か掴める夢か。
此処が終わらぬ夜ならば、夢も果てなく続くだけ……


解説にある通り、本作は元々、岸啓介という造形作家の人がデザインしたロボットをアニメ化するという企画だったらしい。それが紆余曲折を経て企画が頓挫し、この小説版のみが日の目を見ることになったのだとか。そのためかインタビューで語っているように、おもちゃでがガチャガチャ遊んでいるような感覚がとても強い(これって実は作品テーマ的にそのものずばりなのだけど)。ただおもちゃたち当人(?)としては真面目にやっているわけで、オーフェン東部編やエンハウのように陰鬱にはならないし、どんな時にもコミカルさを失わないけれど、後半は結構シリアス。こういうの、アメコミでは結構ありそうだなー。実際、「ミュータントタートルズ」のタイトルを挙げる人もいた。


またその製作経緯から、造形やギミックが、ストレートにかっこいい!と言えるキャラをみんなしている。主要キャラ5人の中では、巨大手裏剣のみを武器とし、凄まじい跳躍力を持つ主人公・ハンターもいいけど、発声機能がなく、亜空間スロットから取り出した花の色や種類によって感情を表現するという機械人・ミュンヒハウゼンがかっこかわいかった。こんなようなキャラ、以前にも見たことあるようなきがしたんだけど、誰だったか。


語り口はハンターの、堅物のお侍みたいな性格のためか、ちょっと時代劇風。「ここ」を「此処」と書くとか、かなり意識的に普段と文体を変えてきてる感じ。ハンターは「面倒な奴」と評されているものの、人格はある程度完成されているからか、秋田作品に頻出する、あの延々とぐるぐる自問自答を続けるようなくだりは鳴りを潜めている。それと、秋田って皮膚感覚に訴える描写が好きだけど、今回は機械人には痛覚がないという設定のため、描写自体は薄め。が、逆に感じるはずのない「ファントムペイン」として積極的にお話に絡めていた。


ちなみにテーマは「支配からの脱却」。舞台設定的に「THEビッグ・オー」を連想したりもした。毎日空から降ってくるオイルを浴びないと機能停止してしまうとか、真っ暗闇の地下世界にはない光を機械人たちが奪い合うとかいった設定も、箱庭世界っぽさを増している。「支配からの脱却」っつってもドミニオン的な存在を倒して終わり、じゃなくて、箱庭世界から抜け出す具体的な手段はないかもしれないし俺たちのクソッタレな日常に劇的な変化はないかもしれないがそれはそれとして支配には絶対屈したりしない!というのは非常に秋田らしい終わり方だった。……でも、続きが読みたい!つーか彼らの顛末が見守りたい。オーフェンでもエンハウでもベティでもそうは思わなかったのに。ストレートに「俺たちの戦いはこれからだ!」過ぎたよいくらなんでも。テーマを完全に消化してるってのは分かるけどさギギギ。