エンジェル・ハウリング(10) 愛の言葉/秋田禎信/富士見ファンタジア文庫


スポルトは死んだ。フリウは父の遺志を受け継ぎ、精霊アマワと戦うことを決意する。そのため、全ての始まりの場所、精霊たちの故郷、硝化の森へとたった一人で向かった。


精霊とは、心の虚無と不在を証明する存在である。それは、動物も植物も生きることを許されない硝化の森で生まれる。念糸使いは、ある意味で彼らに抗する者、だろうか。黒衣とは、人の身でありながら精霊を模倣しようと自らは口を閉ざし、周囲からの接触を遮断した者たちだ。アマワは、では心とは何なのか、そんなものが本当に実在するのか、という疑問から生まれた。彼らは人々の口の中に潜んでいる。しかし答えを追い求めるだけの存在であるがゆえに、答えにたどり着くことはできなかった。


フリウ編完結。刊行時に読んで5年以上、去年再読してからもしばらく色々ああでもないこうでもないとこねくり回してきたわけだけれども、これ!という手応えは今もって得られていない。読むたびに、秋田節濃厚な言葉の洪水に翻弄され、本当に大切な言葉を見失ってしまう。多分、一貫して個人戦の色が強いミズー編に比べ、シリーズの総まとめとしての完結編であって、アマワに抗する者としてのフリウ、の印象が強かったため、いまいち主人公に感情移入できないまま終わってしまった、ということが要因の一つにあるんだと思う。まあそれは言い訳で、自分の読解力および言語化能力が作品に全く及んでないだけなんだろうけど。自分が秋田作品を読み続ける限り、このフリウ編の理解ってのはずっとついてまわりそうだなあ。

  • スィリーは人の言葉を聞いているようで聞いてないため、好き勝手に喋る。それを聞くものがいなくても。しかし、時にはそれに救われる人もいる。「独り言は言っておくもんだってことだな」ってそのものずばりだよなあ。同じく独り言を言ってるだけのように見えて、アイネストは人間であるがゆえに、そこまでたどり着くことができなかった。
  • スポルトの言葉がミズーを変え、ミズーの言葉がマリオを変え、それが最終的にフリウに行き着くというのがよかった。
  • にぎやかしだと思ってたラズとアイゼンが終盤まで出張ってくるとは。この巻に限って言えばサリオンよりも印象が濃かった。