花のズボラ飯/原作:久住昌之 作画:水沢悦子

花のズボラ飯

花のズボラ飯


孤独のグルメ」「かっこいいスキヤキ」などの久住昌之が新進気鋭の漫画家・水沢悦子とタッグを組んだグルメ漫画。夫が単身赴任中の奥さん・花ちゃんのズボラな食生活が綴られる。

  • 男女関係なく独り暮らしの人間が、一人分を作って食べて後片付け、という食生活に虚しさを感じることは多い。だが、この漫画の主人公・花ちゃんは違う。基本的にはズボラだけど、こうと決めれば行動は早く、料理の腕もなかなか手馴れたもの(但し後片付けは面倒なので絶対食べてすぐはやらない)。ポトフ予定だったものにケチャップをぶちまけたり、ワインに高級肉のステーキでおハイソな感じを出そうとしてたのに最終的には焼肉のタレかけて白米と食べちゃったり、独りメシだからこそできるやりたい放題。ミュージカル調に実際に歌って踊りオヤジギャグを飛ばしながら一人分の料理と食事をする姿を見ていると、こっちまで楽しくなってくる。旦那がいない寂しさを空元気で誤魔化してるとか言っちゃいけない。
  • 孤独のグルメ」の谷口ジローによる整然とした背景描写に比べこちらはネームの多さに負けないくらいごっちゃりしてて温かみがあって、ズボラな主婦の生活観がにじみ出ている。また、五郎ちゃんは(外で周囲の視線があるからか)専らメシを食ってる間のぼやきを内語としてのみ発していたのに比べ、花ちゃんは家でも外でもリアクションが激しく、とにかく口に出して騒いでいた。でも基本の言語センスは一緒。
  • 花ちゃんの旦那さんである「ゴロさん」(うちのかみさん的なポジションで姿は見せない)が、五郎ちゃんと同一人物なのではないかと思わせる描写がチラホラ。所々「お持ち帰り?そういうのもあるのか!」とか花ちゃんが言っちゃうセルフパロも、まあしつこくない程度に。個人で輸入雑貨の貿易商をしている五郎ちゃんに「単身赴任」なるものはないと思われるけど、家を空けがちなところは同じ。食べっぷりが良く、わりときっちりしてそうなところも。でもあの五郎ちゃんが結婚したからってタバコやめたり電話越しとはいえ奥さんに愛の言葉を囁いたりするのだろうか。前述したとおり五郎ちゃんと花ちゃんの食事って対極的なので、一緒に食べてるところもまるで想像できないなあ。実際作品内でも「ゴロさん」とは性格がまるで違うということは何度も言われているのだけど……。
  • 夫が単身赴任中の若(?)妻で下着姿やシャワーシーンを頻繁に披露したり体が疼いちゃう的な台詞もなくはないのにちっともえろくないので、水沢悦子先生はエロ漫画でも読んで勉強すればいい。でもamazonでは本作が何故かアダルトカテゴリに入ってたとか。花ちゃんがメシ食うたびにいちいちアクメ顔を見せるので、担当者の人が「味の助」的なものと思ったんだろうか。ふっしぎだなー。
  • ああでもTシャツにパンツ一丁で料理する女の子とかはいいよね……。
  • 代わりにっつーかなんつーか花ちゃんの友達で、デキルOL風のメガネのミズキちゃんが可愛いですね。「『結婚してやめた』って言いたい」はハートにずきゅんと来る台詞だなあ。
  • 久住先生はヒッピー的な人たちに何か思うところでもあるんだろうか。