学園ミステリー 英ファイル File.1:妖精殺人事件/大沼弘幸/電撃文庫

学園ミステリー 英ファイル〈File1〉妖精殺人事件 (電撃文庫)


マイナーアニメを十数年ぶりに再放送してみたら、最終回だけ当時のそれとは別のものにすりかえられていた。当時放映されたそれはハッピーエンドだったはずなのに、再放送ではヒロインが死ぬバッドエンドになっていたのだ。この謎に、今はもう引退した元人気声優の息子である高校生探偵が挑む。


著者がアニメ脚本家だけあって、1998年刊行当時……よりちょっと前かなこれは、のアニメの製作過程がフローチャートを使うなどしてちゃんと描かれ、推理小説としての謎解きに組み込まれていた。TV局のプロデューサー、制作会社社長、監督、作監、撮影、音監、声優といった人たちの思惑が交錯する様は、基本的に共同作業であるアニメ製作ならでは。業界物としては、同じアニメ製作を題材としたラノベミステリの辻真先『TVアニメ殺人事件』より面白かったかも。ただキャラは弱いし、ミステリとしての出来は自分には評価不能


ご都合主義のハッピーエンドVSテーマ優先のバッドエンドとか監督が作品に私情を挟むことの意義とか、その辺をもっと膨らませてくれればもっとよかったかも。なお「妖精殺人事件」であって「妖精村殺人事件2〜スネ毛は死の香り〜」とは一切関係なし。イラストレーターは「福田通生」ってなってるけど、これはアニメーターの「福田道生」かな。「File:1」と書いているけど、現在までのところ続編は出ていない。