竜王女は天に舞う(1)(2)/北元あきの/MF文庫J

竜王女は天に舞う―One-seventh Dragon Princess (MF文庫J)


某所で、「これオーフェンをアレしてね?」と話題になってたのに釣られてみたよ。第5回MF文庫J ライトノベル新人賞佳作。

  • 主人公は中肉中背、黒髪、黒目、黒ずくめ。目つきが悪く皮肉げな顔つきの少年。
  • 主人公は魔術士養成学校<竜の箱庭>のザウエル教室に所属する魔術士。執行部から命令された仕事を同教室の教師やクラスメイトとこななす。
  • 魔術士の総本山であり学園都市でもある<竜の箱庭>に対し、他国軍隊の魔術戦技教育校である<砂漠の楼閣>が存在する。
  • かつては圧倒的だった<竜の箱庭>の地位も、近年では<竜の箱庭>出身の魔術士たちが輩出された先で独自の教育体系を整備し、魔術士の育成を開始したことによって大きく揺らいでいる。
  • 学校からは、要所を脱着式の金属板で補強できる耐刃防弾繊維の戦闘服が支給されている。
  • 教室持ちの魔術士は市内に邸宅を与えられる。
  • <竜の箱庭>が世界中に張り巡らせた謎の情報網<ルクセンブル・ネットワーク>。
  • 2巻では<竜の箱庭>で、一般に公開される他の魔術士養成機関との交流戦が開催される。各組織のスカウトも注目し、かつては殺伐としていたこのイベントも、現在では模擬店や演劇、展示などの企画もあり、学生にとっては息抜きのイベントと化している。主人公は交流戦に参加し、一方でヒロインたちはミスコンに出場。
  • 魔術士は世界の設計図である<タペストリー>を認識し、編み変えることで現実を一時的に変化させることができる。これは生まれついての才能であり、訓練によってどうこうできるものではない。
  • ヒロインは別の世界から竜に姿を変えてこの閉鎖された世界に侵入してきたと言われている種族。この世界に魔術というものを持ち込んだ。人間との長い戦争を経て魔術を盗まれ、ある日を境に忽然と姿を消した。主人公たちは1巻でその遺産を探している。
  • こちらが拳で相手を軽く押すと、反射的に押し返してくる。その動きに合わせて拳を放つ技。
  • 参列者が少なく誰も涙を流さない天才魔術士の葬式。空の棺。
  • 鉄骨が入っている軍靴。
  • 敵に回った教師が生徒にかけた言葉「いい奴に育ったよ、お前は」。
  • 脅し文句「歯医者を知ってるか?」。
  • 主人公とヒロインの掛け合いで出てくる台詞「勝利とて、虚しいものだ」。
  • 地の文では「嘆息」を連発。


あと、主人公の幼馴染で、ことあるごとに下ネタを連発する、巨乳メガネっ娘の名前が「ロッテ」というんだけど、これは多分関係ない。


……まあオーフェン好きなんだろうなーとは思ったけど、どうだろう、無意識にでもこれは使える!と思って組み込んだわけでもなく、何らかの批評精神があったわけでもなく、尊敬の念を込めてのオマージュとかでもなく、単に好きなものをアレコレ詰め込んでみました、という感じ。その中でたまたまオーフェンからの引用が多いだけ。少なくとも2巻まで読んだ限りでは。これ、自分が秋田信者だからたまたまそこばかり目についたけど、読む人が違えばまた別の作品が連想されるんじゃないかしら。上に挙げたような部分が所々引っかかるものの、全体的な話の流れや読後感は似ても似つかない。色々詰め込んでるからゴチャゴチャしてて読み辛いけど、それはまた別の話。そもそもオーフェン自体ダイナ(ry


……正直なところ、自分は「かどちんや西尾やきのこみたいな分かりやすいフォロワーがなんで秋田にはいないんや!だからラノベ史でいまいち影が薄いんや!」なんていうルサンチマンを抱えていて、この話を聞いた時には渡りに船とばかりに助平根性を出して読んでみたんだけど、あんまりそういう感じでもなかった。と言いつつ、次巻の舞台が温泉だからといって、そこが入浴剤使ってるだけのインチキ温泉郷だったり、やる気なさげな性格で目立つ鎖骨と大きな三つ編みが魅力的なヒロインが登場したりしたら、さすがに絶賛怒るよ。


秋田信者の視点抜きで見ると、アイドル歌手のツンデレヒロイン可愛いです。アイドルマスター編とかやって寝取られてくれたら最高です。アクションシーンは、文章がやや読みにくい上に、「魔術」という割に一人一人が使えるそれが実質的に限られてるので、やや退屈かな。でもこれは、能力が限定されてるからこそ面白い!という人もいるかもしれない。空に浮かぶ島々によってできている閉鎖型の世界、という設定は今のところあまり活かされてないけど、これから閉鎖世界の外に出るぜー、という話になっていったら嬉しいな。


……そういえばオーフェン以前に「魔術士」って言葉が使われたことあるのかしら。由来は別としてそれほど独特な発想でもなさそうだけど。最近では河内和泉の『機工魔術士』とかあったなー。


「お話やキャラは嫌いじゃないので変に絡まれてほしくはないなあ」という気持ちと「でもここまで似てると助平根性がうずくなあ」という気持ちの板ばさみに合った結果、ああなりました。