上遠野浩平の世界

  • 上遠野浩平がデビューしてから10年以上が経過した。現在、主な出版社だけでもAMW、富士見書房講談社徳間書店祥伝社から40の著作が出版されている。これらは、ノベライズである「マーズの方程式」(未単行本化)を除いて全て同一宇宙の中での出来事であり、出版社を跨いでどこかで見たような登場人物がホイホイ顔を出す。
    • 特に色んな世界に顔を出すのは、イマジネーター=水乃星透子、霧間誠一(の著書)、あと人間ではないけど虚空牙辺りだろうか。
  • このような作品形態は朝松健辺りも採用していると聞いたけど、詳しくは知らない。
  • 既存の読者へアピールするようなリンクかというのは、作品による。ほとんど裏設定に過ぎず、ガチ信者の人がニヤリと出来ればいい程度のものもあれば、これは別の作品を知らなきゃ話が理解できないだろ、というものもある。
  • ファウストでの発言によると、かどちん本人としては、あのクロスオーバーは投稿生活時代に書いていた色々な作品の設定を引きずっているところがあるとか。「ブギーポップ」の頃から既にそういう構想はあったらしい。執筆する時は、まず話の大枠があって、じゃあその話の時代はいつ頃だ、と考えた際に、じゃあこのキャラがその話にはちょうどいいな、という風に配役を決めていく。基本的には一つ一つの話がそれぞれで完結するように書いていて、「ビートのディシプリン」も番外編という認識はない。年表のようなものも作らず、設定の齟齬についてもそこまで気にしてはいる風ではない。一人のキャラクターは、その作品の中で立ち位置がハッキリしていればいい。云々。
  • 読者としては、そのキャラが主人公の話が終わってもいつかどこかでまた会えるかもしれない、というのは他のシリーズに手を出すきっかけともなり、「ヴァルプルギスの後悔」2巻とか織機が好きだったのでそりゃもう大喜びだったんだけど、ふと我に返ると不安にもなる。自分は好きなキャラが出ているからといって際限なく手を出す、という読み方がこの先どれくらい持続できるんだろうか。こう言っちゃなんだけど、今のところ上遠野浩平という作家は好きではあるけど、この先も全ての著作を追いかけたい、と思うほどには薫陶を受けてるわけではないからだ。現状の読了数で言えば、単行本になったものだけでせいぜい8割くらい。20冊30冊続いててもそれが一つのシリーズである内は追いかける気力も湧くんだけど……
  • というか作品間リンクって最初はその世界がすごい広大であるかのように感じるんだけど、段々「結局それか」と思うようになってしまわないか、というのが怖い。今だって色んな事件の裏に高確率でみなぽんがいたりるし。
  • いっそかどちんに限らずラノベを一切断って10年20年して、ふと書店で「上遠野浩平」という名前を見つけて、めくってみたらいまだに霧間誠一や虚空牙といった単語を目にする……。くらいまで行けば幸せなんだろうか。
  • あのシリーズは読んだこのシリーズは読んでないとかで読者間格差が出にくいのはいいかもしれない。


以下本題とは関係ないこと。

  • 「ネット上の文章と小説の文章は違うので文字主体のインターネットは小説に登場させにくい」「誰がイラストを担当するか分からない段階では記号的な萌えキャラは出せない」「本来目に視えないものが視えるようになるのはジョジョのスタンドの影響」「酒鬼薔薇事件の影響で当時残虐描写を減らすよう編集者に言われた」「ブギーポップシリーズの複数視点から書く手法は氷室冴子が80年代にやったことの繰り返し」「ファンタジーノベル大賞にも応募した」「設定は自分の中で崩せないものとして存在するけれど、いちいちそれを小説に登場させる必要はない」。以上ファウストより発言を要約。
  • 電撃文庫徳間デュアル文庫といった、ライトノベルの本流」佐藤俊樹の評論より。
  • 西尾も編集の人も「VSイマジネーター」えらく買ってんのね。
  • かどちんは榊原玄とキトの「子連れ狼」的な番外編をその内書きそう。


ブギーポップ』ノ全テ的な副読本が欲しい。勿論他社から出てるシリーズも網羅したやつ。