7 days wonder -紅桃寮の七日間-/谷原秋桜子・野村美月・緑川聖司・加藤実秋/ポプラ社TEEN`S ENTERTAINMENT

7 days wonder―紅桃寮の七日間 (TEENS’ ENTERTAINMENT)


舞台:紅桃寮、404号が「開かずの間」、7日間限定、の三つのキーワードを共通設定としたミステリーアンソロジー。面子的にはライトノベル、児童文学、ミステリーなどで活躍中の新人以上中堅未満な人たちを集めたっぽい。


お目当ての野村美月の作品タイトルは、「桃園のいばら姫」。女子校の中等部を舞台に、孤高の姫君と、彼女と会うために転校してきた主人公を描くどろでろのサスペンス物。桃の甘ずっぱい香りが充満した世界が息苦しい。「文学少女」シリーズでは1巻の中で起こる展開を70Pに凝縮。その短いお話の中でいつも通りぶんぶん振り回されて疲れた。面白かったけど、野村美月作品は日常シーンの助走を経て終盤一気にダイナミックな展開に、というところが好きなので、長編で読みたかったかもしれない。自分が基本的に短編の妙を楽しめない人というのもあるけど。


谷原秋桜子の「聖母の掌底突き」は、秀逸なタイトルと連動したオチが面白かった。緑川聖司の「三月の新入生」はフツー。加藤実秋の「マジカル・ファミリー・ツアー」は唯一、学校の寮ではなく、主人公の父親が勤める会社の保養施設が舞台。お調子者の父、旅行先でもダイエットのことばかり気にする母、食べ物のことしか頭にないメタボ気味の弟など、コミカルな方面にキャラが立っていた。