騎士は恋情の血を流す/上遠野浩平/富士見書房

騎士は恋情の血を流す    The Cavalier Bleeds For The Blood


「しずるさん」シリーズ2年半ぶりの新作にしてスピンアウト。「しずるさんVS統和機構」「しずるさんとよーちゃん初めての事件!」なんて煽られているけど、前者は真っ向から敵対するというよりは勝負のさなかすれ違ったという感じで(まあしずるさんが能力バトルを繰り広げるとは思ってなかったけど……)、後者に関しては出番自体が少なく少々ガッカリ。『ヴァルプルギスの後悔』2巻における織機の主役っぷりが期待していなかった分嬉しかったのとは逆に、こちらは期待が大きかった分残念だった。2人のイチャイチャを補給するだけなら、ドラマガに掲載されている短編の方が効率がいいかもしれない。


これまでのしずるさんシリーズとの最大の相違点は、よーちゃんが友人のために自分からしずるさんに事件の解決を頼んでいる、ということか。その割に友人との仲のよさはあまり描写されていない、というかよーちゃん自らが特別親しいわけではない、と言っている。でもそんなよーちゃんだからこそしずるさんは助けたんだろうな。


ふと横溝正史作品の中には、由利麟太郎に定めていた探偵役が後年になって金田一にリライトされた作品がある、なんて話を思い出した。そこら辺ミステリ論者の間ではどう考えられてるんだろうな。つまり、「この事件はこの探偵が解決しなきゃいけない」というような意識がどうたらこうたら、という辺りについてなんだけど。