放浪息子(9)/志村貴子

放浪息子 9 (BEAM COMIX)


前巻の怒涛の引きから、必ずしも「かわいいは、正義!」とはいかないことが証明された巻。何が辛いって、単純に「周囲の無理解からにとりんを守ろうぜ!」という展開にはならないのが、優しくて、辛い。佐々ちゃんなんかはそういう面もあって、それがにとりんの支えになっていることは確かなんだけど、「腹心の友」も今回は決定打とはなりえない。勿論みんなにとりんのことが好きではあるものの、趣味というかプライベートでならともかく、社会=学校に立ち向かってまで女装したいとは思っていなかった安那ちゃん始め、肝心のにとりんが何をしたいのかまだ固まってないから、高槻くん千葉さんマコちゃんとどういう距離を取ったらいいのか測りかねているように感じる。「二鳥くんがあんなことをしなかったらわたしたちこんなに気をもまなかった」という千葉さんの言葉が胸に刺さる。実際、その通りではあるんだよな。


それだけに、ご両親が戸惑っている時に(「間違えちゃったのかな」というキツい一言の後、特にこれといった行動を起こさないのがこの漫画だなあと感じると同時にちょっと怖くもある。友達が遊びにきてくれるのが安心材料になってるんだろうけど)、ああいうことを言ってやったお姉ちゃんには、ジーンと来た。姉である自分が学校でどういう扱いを受けるのかは怖い。でも、弟への態度は既に覚悟完了しているんだと感じた。安那ちゃんのことといい、お姉ちゃんはいいお姉ちゃん過ぎる。あとは、ユキさんの過去と「話半分に聞いといてあげ」たことがどんな影響を与えるか、かな。


文哉はにとりんにとってこっち側でもあっち側でもない、第3の立ち位置に。土居についてはもうちょっとフォローがあるかと思ってんだけどなあ。読み間違ったかしら。一方瀬谷君は作者の寵愛をたっぷり受けていた。


おなじみイシデ電のあとがき漫画は、漫画の絵柄はスッキリしてるのに汚部屋女って辺りが分かって面白かった。