サマー/タイム/トラベラー(1)(2)/新城カズマ/ハヤカワ文庫JA
地方都市に住む高偏差値の高校生グループ。その中の一人が時間跳躍能力……らしきものに目覚めたことから、彼らの「プロジェクト」は始まった。第37回星雲賞日本長編部門受賞作。
『夏への扉』の名を冠された喫茶店とか、ネットを通じた監視社会だとか、ぐだぐだの地方行政地方経済だとか、ありえたかもしれない過去と未来が断続的に脳細胞に訪れる病気だとか、顔を突っつき合わせてチャットで会話する親子だとか、伝統のある家のお嬢様が考える遺伝子工学の未来だとか、独自の宇宙論だとか。そういう作中に散りばめられた要素が、ラスト、ヒロインが跳んでからだーっと、なんというか、終わったものとして提示される。すごいカタルシスだった。