ラノベ部/平坂読/MF文庫J

ラノベ部 (MF文庫J)


読書初心者の主人公が、何の気なしにラノベ部に入ることによってラノベの楽しさに目覚めていく。雑談小説/駄弁り小説/らき☆すた小説。


今は第一線を退いているとはいえ自分も10年前はバリバリのライトノベル読者だった身。身に覚えがあり、共感できる小ネタも多く、文章も読み易くて、結構面白かった。特に「うんうん、そうだよなー」と思ったのは、主人公が自分の小遣いで初めてライトノベルを買う時の話。主人公の好みにあったものを選んでやる、という先輩の提案を断って色々悩み、その悩むのを楽しみながら初ラノベを選んでいく辺り。児童文学とラノベの違いを、前者は親が買い与えるもの、後者は子どもが自分の小遣いで能動的に買うもの、といったのは誰だったか。いずれにせよ、多少は人の意見を参考にしても、最終的な選択はやはり自分で、という姿勢が好きだ。それならつまんないものにぶち当たった時でも「自分の選択が間違ってたんだ」って納得できるしね。勿論、どんな小説でも読者の姿勢次第で幾らでも得るものはある、とは言えるけど、それでも読者に費やせる時間が有限である以上、優先したいものとそうでないものはあると思う。


ただ、ラノベが好きっていうことに屈託がなさ過ぎてちょっとこっぱずかしいところもアリ(いや主人公以外みんな屈託はあるのか。だから反動で肯定的な立場に走らざるをえない?)。だから、これを初心者の人に入門書として〜、ってのは自分はしない。これこれこうだからラノベは素晴らしい、と説くよりも単純に自分が面白いと思うものを勧めりゃいいじゃん、と思うし、初心者に「この本はこういう人のためにある」とか邪魔なだけなんじゃないかと思う。ジャンルに囚われないで、と言っちゃうこと自体が既にジャンルに囚われてる、とでも言うかな。


綾先輩の扇子ネタとかは、ちょっとくどい気がした。ああいうネタって新房作品における黒板ネタみたいに、背景でしれっとやってるからいいんであって、文章の中でやられると、ちょっと。特に発展性のあるものではないし。


イラストレーターの人は、143ページの本屋の風景みたいに、背景というか小物を書き込んでるところが好感が持てた。ところで意外とあんまり指摘されてないような気がするんだけど、これ表紙も同じ月に発売された同イラストレーターの『SH@PPLE(3)』のパロディ?


SH@PPLE―しゃっぷる―(3) (富士見ファンタジア文庫)ラノベ部 (MF文庫J)


いやこういう構図は、この人に限らずラノベ表紙には多いけどさ。