GOTH モリノヨル/乙一×新津保達秀/角川書店

GOTH  モリノヨル


映画にインスピレーションを受けた(らしい)乙一が書き下ろした、俺KOEEE小説の傑作『GOTH』(感想)の番外編+その内容に沿った森野の写真集。基本的に単発物しか書かない作者にしては珍しいのかな、と思ったけど元々『GOTH』はザ・スニに2話だけ掲載されてその後書下ろしを加えて単行本化、という経緯があったな。連載か読みきりか、そこら辺の扱いはよく分からないけど、乙一作品の中でも少々特異な立ち位置にあるのかもしれない。


副題は「森野は記念写真を撮りに行くの巻」。モデルに演技されることによって作品が記号化されることを嫌い、演技できない被写体―――死体を作り、それをフィルムに収めることを繰り返してきた写真家が、過去「撮影」をした現場で森野と出会う。……『GOTH』って語り手=主人公の内面を全く描かないことで彼を人外たりえていたと思うのだけど、今回は饒舌なくらいに語り手(「僕」ではなく犯人の方)の心情を書き込んでいて、違和感を覚えた。「土 Grave」などは、語り手が「僕」ではなかったけれど、ここまで説明的ではなかった。

この作品で書かれるのは『敵=妖怪=異常者』としての殺人者ではない。むしろ文学的な『人間』に近い。書かれるのは一人の『生』を持った、生身の人間である。まさに自然主義的リアリズム。

http://d.hatena.ne.jp/kamiharu/20081221/1229850722


或いは、絵に描いたような『人間』、絵に描いたような猟奇殺人事件という、これも一種の記号化なんだろうか、とかなんとか。


あと、球体関節人形云々ってお義父さんの影響っすか。