スレイヤーズ(15) デモン・スレイヤーズ!/神坂一/富士見ファンタジア文庫

スレイヤーズ15 デモン・スレイヤーズ! (ファンタジア文庫)


本編最終巻。1990年の開始からちょうど10年目の完結。各地で起こる異常気象。デーモンの大量発生。魔族に誘われ、因縁のサイラーグでリナたちが見たものとは―――。


結局再読完了するのに半年ほどかかった。第2部を通して読み返してみると、リナたちが魔族との戦闘に慣れ過ぎた、というのがよくなかったのかもしれない。強大な存在である魔族に非力な人間であるところの僕たち私たちが知恵と勇気で立ち向かう、というのが本編の基本構造であるからして、魔族が多少間抜けなのはしょうがない。でもリナが、或いは神坂センセがいくら知恵を絞って作戦を考えても結局そこに終始するんだと思うと、全部がルーチンワークに見えてしまって……。ラグナブレードも、剣士としての腕前はそこそこでしかないリナが接近戦に挑まなきゃならない、という欠点がある割に便利過ぎた気がする。そういった点を鑑みると、第2部の中では『クリムゾンの妄執』『セレンティアの憎悪』のアクションが抜群に面白かったのは、リナたちを舐めてない人間相手だったからなんだろうなー。


第1部にあった世界の謎を解き明かす、というアレがなくてファンタジーとしてのダイナミズムに欠けた、というのは、どうだろ、そっちの方はアニメの『TRY』の方で満足してた人間なのであんまり感じなかった。魔族のいっちゃん強い奴(現状ではフィブリゾ)を倒した後は結界の外に広がる新しい世界へ、じゃなくてあくまで結界の内にとどまって人間同士の争いに終始する、ってのも一つの考え方としてはアリじゃないかなー。シリアス一辺倒になったからつまんなくなった。そういう物言いも分かるけど、直接の要因としては自分はあんまり。ゼルアメが出てないから/ルーク・ミリーナに魅力がない。仲良し4人組がコンビ組んだのは5〜8巻のみだしなー。まあ、ルークもミリーナもどっちかというとストーリーが先んじる形で生まれたキャラじゃないかという気はするので、あの二人に個性で劣る、と言われたら反論する気はないけれど。あとまあ、リナ・ガウリイとルーク・ミリーナの関係がいまいちしっくりこなかった、かな。


人間のネガティブ感情を糧とする魔族をダシにしてるけど、実は一番怖いのは人間なら最後の敵はやはり人間、しかしその闇を打ち払うのもまた人間……というテーマの話としては、うまいことまとまってたんじゃないかと思う。あの行き当たりばったりで続編をまるで考えてなかった1巻からよくぞここまで。あのシーンとだぶらせたラストは、多分シリーズがある程度進行した時点で考えてたんだろうなー。正直すこし出来過ぎてた気もしなくはないけど、初読時はちょっとうるっときた。


総評。狭義のハイ・ファンタジーで読者と異世界との距離感をこれだけ近づけた作品は早々ないだろうなーと思った。次は同作者のロー・ファンタジーであるところの『日帰りクエスト』を読みたい。