細雪(上)(中)(下)/谷崎潤一郎/新潮文庫
女中達に対する愛憎の変化が激しくなって、嫌い出すと極端な言葉を使い、「殺す」とか「殺してやる」とか云うことを屡々口走る。
戦争の影響と云えば、この小説に書かれた事柄それ自体が、日本が戦争の準備期に入り、だんだん内部的に変質して行くと云うか、いろいろの横すべりを生じて行く時代の様相と繋がっているのであるから、何年何月にはこういうことがあったと云うようなことを年代記風に覚え書にして、それに対応したあらすじも終りまで書いておかねばならなかった。……(略)……私はこれまでの作品でそういう日付に関係したことを調べたり覚え書きしたりしたことはなかったのであるが、今度はそういう努力も惜しむわけには行かなかった。
三島由紀夫の評言をかりれば、谷崎にとって日本の敗戦とは、「(日本の男が白人の男に敗れたと認識してガッカリしている時に、この人(注・谷崎)一人は、日本の男が、巨大な乳房と巨大な尻を持った白人の女に敗れた、という喜ばしい官能的構図」として敗戦を眺めていたということなのである。
このように考えてくるならば、戦後の谷崎が"白人の女"に匹敵するべきエロチシズムと想像力を、日本の女のうちに見いだそうと試みても、それほど不自然ではあるまいと思う。
最後のは解説から。今までの谷崎のイメージに似合わず、NHKの連ドラでやってそうな雰囲気だなあ、と思った。ラストがアレなのを除けば、一番一般受けしそう。