見知らぬ者の墓/マーガレット・ミラー 榊優子:訳/創元推理文庫

見知らぬ者の墓 (創元推理文庫)


街の名士の妻・デイジーは奇妙な夢を見た。崖の突端に聳えたつ墓標に、自分の名前が刻まれていたのだ。没年は4年前のものだった。そんな内容に何ごとかを感じずにいられなかったデイジーは、夢の再現に奔走する。


各章の冒頭にその章を暗示するエピグラム挿入され、最終的にそれは父親から娘・デイジーへの一通の手紙となる。これは『エンジェル・ハウリング』2巻(フリウ編第一部)の、父ベスポルトから娘フリウへ宛てた手紙の演出とよく似ていた(ただ、『エンハウ』の方はこちらほど話の根幹に関わる使われ方はされてないけど)。フリウ、もといデイジーを助ける探偵の名前がピニャータだしなー。秋田はどんだけミラー好きなんだ。あとは、自分の名前が刻まれた墓標を夢に見る主人公とか、「失踪」をキーワードにした物語とか、気がついた時にはもう致命的なまでに手遅れで抗えない時間の流れ、とか、賢者と愚者についての話とか、……んー、そこまで来ると、最早読み方が、多少(?)強引でも関連付けをせずにいられない、信者による信者のための連想ゲームと化してる気がするな。自重しろ>自分。


精神的にやや難があると思われてる人が失踪もしくはそれに類する何らかの行動をとったことで周囲の人間たちの怪物的な内面が白日の下に晒されていく、という構造は『マーメイド』(と、まあ『これよりさき怪物領域』もそうか?)と一緒。或いは、人種差別ネタが根底にあることと合わせて、この辺りがミラーの特徴なのかもなー。最後のは自明のこととして扱われていて、現代の日本人である自分には理屈ではわかっても感情としてなかなか分かりにくいところはあった。