ダブルブリッドⅩ/中村恵里加/電撃文庫

ダブルブリッド〈10〉 (電撃文庫)


胸のすくようなアクションも、意表を突かれる謎の解明もなく、物語は既に求心力を失っていた。


―――それでも、最後までちとにくとほねに嘘をつかなかった、という一点において、自分は、この作品を高く評価している。


1巻は、単体で綺麗に完結していた。2、3巻の展開に、1巻で完結していれば、という人たちがいた。4巻で物語は大きな転換点を迎え、事態はますます混迷の度を深めていく。同時に展開はますます陰惨なものとなり、主人公が流す血の量は加速度的に増大し、肉どころかその下の骨が露出して……といった具合にグロテスクな描写がページに占める割合が大きくなっていく。


その頃自分が思っていたのは、この人はストーリーのためじゃなくて、ただ書きたいという欲求のためににグロテスクな描写を書き連ねているんだろうか、ということ。『少女小説家は死なない!』に登場するキャラクターを例に挙げるまでもなく、文字通りの流血沙汰を得意としている人はいると思う(なんとなく女性の方がそういうの好きかなーって気もするけど、これは本当にそういう気がするだけ)。いや、別に好きなら好きでいいんだ。実際のところはどうか分からないけれど、作者がそれを望むなら書きたいならいくらでも書いて構わない。ただ、それをストーリーの都合上安易に翻したりはしてほしくない。最後の最後まで貫き通してほしい。……そんな期待に見事応えてくれた作者と主人公に敬意を表したい。