籠の中の15分/秋田禎信

野性時代 第55号  62331-56  KADOKAWA文芸MOOK (KADOKAWA文芸MOOK 56)

野性時代 第55号 62331-56 KADOKAWA文芸MOOK (KADOKAWA文芸MOOK 56)


2段組18ページ。「青春文学の新たな地平」っていうコーナーの一環だけど、あんまり青春っぽくはない。遊園地の観覧車に仕掛けられた爆弾が爆発するまで15分。どこにも逃げられない閉鎖空間で一組のカップルが別れ話を始める。

俺タチノ恋愛ッテ何ダッタ!?
極限状況のなか、究極のナゾに迫る男と女のディベート・ノベル!


最後は弁護士と戦う強い意志こそが重要だ、というような話。秋田にとって男女関係と弁護士は切り離せないものなのか。いや実際には出てこないけど弁護士。『カナスピカ』よりは登場人物の生々しさが秋田らしく、まあ色んな意味で大人向けなのかなあ……?とは言えなくもない。けど、なんとも反応に困る話。引用してる煽りを打った編集の人もこれどう表現していいか困っただろうなあ。男女関係が絡む、良くも悪くもグダグダな会話劇、という点から『ROOM NO.1301』を連想もしてみたり。会話劇と言っても『しもそ』みたいな掛け合いがあるわけではないのが辛いところ。


……どうも我ながら歯切れが悪いな。つまり、秋田作品にみられるその手の問題に関する生々しさを包み隠さず出したらこんな風になるんだろうなあ、というものではあるんだけど、こちとらその手のものを読み解くだけの経験がなくてどうしたもんだろう、というか、なんというか。あと、あれだ、生々しさがいいとは言っても、まずキャラクターが立ってることが第一条件なのかも。


秋田の前には壁井ユカコの短編が載ってたんだけど、それがオタク大学生のアパートに家出中の女子中学生が転がり込んでくるというもので、こっちも別の意味で反応に困った。あと、次号は米澤穂信特集みたい。