ライトノベルという言葉への最初期の反発

意味不明の言葉を耳にするようになった。
ヤングアダルト」とか「ライトノベル」などという言葉だ。
どうも小説の一ジャンルを示しているらしいのだが、不思議な分類である。
これは、単に「小説」と呼べば、それですむ。わざわざジャンルを区切る必要はない。

ジュブナイルという表現がある。
子供向け小説のことだ。
これは理解できる。ある一定の年齢よりも下の子供たちのために言葉を選んで書かれた作品の意味になる。日本語でいうと、童話にあたりそうだが、しかし、ニュアンスは少し違う。われわれの感覚ではあくまでも小説の形式が整っている低年齢児童向けの作品がジュブナイルである。
ジュブナイルとそうでない小説。
小説のカテゴリーは、それで十分である。ほかには要らない。
私は本になった作品では、一度だけジュブナイルを書いたことがある。ヒロイック・ファンタジーの「異世界の勇士」がそれだ。あの作品は、言葉を意識して選んだ。それ以外は、すべて一般向けの小説として書いてきた。結果的にそうなったとしても、意図してある特定の世代のために書いたということはない。言葉もふつうに使った。何も制限を設けなかった。

実際はどうなのかは知らないが、いま流行っているヤングアダルトライトノベルなどの分類は、はっきりいって弁明のように聞こえてくる。
まともな小説が書けないから、そういうカテゴリーをつくってごまかしている。私には、そのように思えてならない。


高千穂遙による菅浩江『メルサスの少年』文庫版(1991年12月発行)解説より


ライトノベルという言葉がニフティサーブで生まれたのが1990年代初頭とされている。当時は「ヤングアダルト」はともかく「ライトノベル」という言葉を書店等で見かけることはほとんどなかったと思う。使われ方は否定的でも、91年時点で既にこの言葉に注目してるというのはある意味凄い。いわゆるファンダムでは既にばりばりに使われていたのかしらん。或いは、商業の紙媒体で初めて「ライトノベル」という言葉を使ったのはこの解説?……というのは明らかに先走りすぎ。ただ、あくまでこの解説の主眼は菅浩江が次代を担うSF作家であるということで、引用部分はその引き合いに出されただけ、という感じ。自分がライトノベルという言葉を目にしたのは、榊一郎があとがきで「軽小説屋」を自称したのが最初でした。具体的にどの作品だったかは覚えてないけど、デビューが98年なので、それ以降ってことになるのかな。


『メルサスの少年』は新潮ファンタジーノベル・シリーズの一冊。星雲賞を受賞したらしい。世界の作りこみに関してはすげーと思ったけど、どっちかというとデビュー長編の『ゆらぎの森のシエラ』の方が好みかも。

追記

最初はこれでいいかな、と思ったのですが、微妙な問題なので、引用の中略していた部分を付け加えました。部分がそうです。お手数おかけします。