シンデレラ迷宮・シンデレラミステリー/氷室冴子/集英社コバルト文庫

シンデレラ迷宮 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)シンデレラ ミステリー (集英社文庫―コバルト・シリーズ)


フィクションが現実を侵蝕する、という話は幾つか読んできた。けど、現実がフィクションを侵蝕する、というのはこれが初めてだった。


感触としては、「目覚めたらそこは異世界だった」系の異世界往還型ファンタジーに近いのかな?但し、主人公が迷い込んだのは異世界ではなく自分の内面世界。そこには、引きこもりがちの主人公の友人だった『白雪姫』『白鳥の湖』『眠れる森の美女』や、『ジェイン・エアー』といった物語の登場人物たちが住んでいる。物語では幸せな結末を迎えるはずだった彼女たちは、何故か不幸を抱えていた。そして、それは現実で主人公が味わった不幸に端を発していて、主人公の問題を解決すること=内面世界の彼女たちの問題を解決し、幸せに暮らすこと=現実世界に還ること、なのでした。……なんか、こう書くと全然違う気も。


実際のところ、一人の読者が生きようが死のうが創作物が変わるなんてことはありえない。でも、一度読んで既にその人のものとなった作品に対しての解釈/読み方が、現実での経験に即して変わる、というのは誰もが覚えがあることだと思う。それをその人が意識的にコントロールして、外に向けて発表することを二次創作というのかな。