遠まわりする雛/米澤穂信/角川書店

遠まわりする雛

理屈と膏薬はどこへでもつく


あまーーーい!このシリーズって恋愛ごとに関してはもっとこう、上品というか、奥ゆかしく描写していくもんだと思ってましたが、ここに来てド直球が。むしろ今までが控えめだっただけに、表題作のあのラストには悶えました。少々性急過ぎる気もしますが。読んだ後数日の間思い出してはニヤニヤする自分はさぞかしキモかったろうよ。つーかあれね、考えてみれば温泉に行った時、隣の女子浴場でL様が体を流している音が聞こえたとか、さらっと流してはいるけど、描写されているものが奉太郎の心情の全て、とは限らないんだよなー、とか。確かミステリでは地の文では嘘をついてはいけないってどっかで聞いたような気はするけど、必ずしも全てを述べる必要もないわけで。妄想の余地が広がりまくり。


というわけで、「古典部」シリーズ4弾は短編集。奉太郎が高校に入学し、L様に出会ってからの1年間に起きた出来事が時系列順に並んでいて、奉太郎の心情の変化がとても分かりやすい。……でも、あれだけはっきりと自覚しちゃうと、他の話が結構ほろ苦ENDだけに、別離フラグではないかと疑ってしまうなあ。なんにせよ、「手作りチョコレート事件」のもう一組の男女の方も合わせて、今まで通りとは行かなそう。差し当たっては、新年度に入って古典部に新メンバーが入ってきてただでさえ複雑な関係を引っかきまわす……なんて俗な想像をしてしまいますが、さて。わたし、気になります


最初の引用は、自分がミステリというものに対して漠然と抱いている偏見、苦手意識というものをうまく説明してくれるものではありました。