ダブルブリッド/中村恵里加/電撃文庫

ダブルブリッド (電撃文庫)


公式発表があったので、完結に備えて再読開始。


普通の生物とは全く異なる遺伝子を持った「怪」と呼ばれる存在が跳梁跋扈する世界。日本政府は、人と同じ姿と知性を持つ「怪」に国民としての権利と義務を与え、また「怪」の起こした事件を解決するため彼等の一部を警視庁捜査六課で飼っていた。警察特殊部隊の新人・山崎太一郎は、合同捜査において六課の、見た目少女としか見えない「怪」片倉優樹と出会う。両組織の連携を計るため、六課に出向する太一郎。最初は頑なな態度を崩さなかったが……。第6回電撃ゲーム小説大賞<金賞>を受賞した伝奇ホラー。


今となっては―――というか当時から割とオーソドックスだったストーリー、設定、文章。じゃあこの作品の魅力は、というと、一つは片倉優樹・通称優さんのキャラクター。17歳で成長が止まっている(イラストでは10代前半にしか見えませんが)けど、実年齢は25歳。何事においても適当でどこか退廃的な雰囲気を漂わせる人外ロリにして、女上司。酒飲み属性(でも酔わない)で更に倍率ドン。他のメンバーがどこかに行っちゃったため彼女と二人きりの捜査六課は、時が止まったかのようで、ある意味『水月』におけるマヨイガみたいな理想郷。


そんな平穏な日常と反して、鬱グロスプラッターな描写が結構凄い。人外ヒロインにはつきものではあるとはいえ、1巻でいきなり眼を含む全身にホローポイント弾を撃ち込まれ、特殊な金属でできたナイフで手首を切り落とされるヒロインはなかなかいないと思う。あまつさえ、病院に行けないと言うので、前者は自分でピンセットと包丁で弾丸を摘出し、後者は太一郎が針と糸で縫い合わせるとか。女性作家の中には文字通りの流血沙汰が好きな人も結構いるみたいだけど、この人もそういうクチかなあ。でも描写としては、そういうのを美化しようとしたり、読者に嫌悪感か何かを与えようという感じはあまり見られなくて、むしろ淡々としてる。それでも優さんが普通に痛みを感じてる内はまだよかったんだけど、巻が進む毎にますます病的に陰々滅々としてきて、ドツボにはまり込んでる感じ。だが、それがいい


この1巻だけで一旦話は完結してるので、興味がある人はとりあえず読んでみればいいと思います。


……山崎太一郎という名前は、新井素子の『星へ行く船』の登場人物と同性同名だけど、作者が意図したのかは分からない。外見や性格はあんまり似てない気がする。