慶応四年のハラキリ/夢枕獏/集英社文庫

慶応四年のハラキリ (集英社文庫)


『仰天文学大系』の改題。「上段の突きを喰らう獅子」「わたくし未婚の地の文でございます」「極限の不快指数」「慶応四年のハラキリ」「異邦人」を収録。


「上段の突きを喰らう獅子」は、星雲賞受賞作「上弦の月を喰べる獅子」のパロディ。この作品では螺旋蒐集家が関節技蒐集家に、宮沢賢治はなぜか地上最強を目指す狂った武道家になってしまっている。なんというか、存在が既に反則。でもこれ、「上弦の月を喰べる獅子」を読んでないと面白くも何ともないんじゃ……


「わたくし未婚の地の文でございます」は、なんだかよく分かるような分からないような話。地の文が自我を持っている、というifとでもいうのかなあ。

妹は、この前、伝奇バイオレンスに強姦されて、ノルウェイの森に住んでいた婚約者に婚約を破棄され、一時期はクリスタルに身をまかせてしまおうかとも考えていたようでございますが、結局は、親身になって心配してくれた方と結ばれ、その影響でございましょうか、今では限りなく透明に近くなって、どこにいるやらほとんど見えなくなってしまいました。


そんなん。ちなみに、この話に登場する伝奇バイオレンス作家は、「物語の筋は、書きながら考えてゆき、場合によっては、過去の回想シーンなど、いくらでも変えてもよい覚悟」で書いているらしい(笑)