妖精配給会社/星新一/新潮文庫

妖精配給会社 (新潮文庫)


ショートショート集。「アフターサービス」「おそるべき事態」「ひとつの装置」「すばらしい星」「ごきげん保険」あたりがよかった。

エヌ氏は心のすみで、性的な力が高まっていることを、ひそかに期待していた。だが、そのようなけはいは、自分でも感じなかった。
エヌ氏は、またがっかりした。まあいいさ。そんな能力が高まったとしても、天使のすることだ。同時に、生殖能力も高めさせられたにちがいない。なにしろ、「うめよ、ふやせよ」とかいう、キャッチフレーズの発明者の一派だ。あちこちに子供ができたら、天使は喜ぶかもしれないが、こっちは、たまったものではない。


「天使と勲章」より

文章とは(中略)うまいへたではなく、あくまで人柄だ。ユーモアのない人にユーモラスな文の書けるわけがなく、大まかな性格の人に神経質な文は書けない。
文章技術などより、自己発見のほうが先決である。それだけでいい。
あとは、辞書をそばに誤字をへらすよう努力し、文字をていねいに書くように気をつければ、文章にはしぜんと、あなたの人柄のいい面があらわれてくる。相手は必ず好感を持って読んでくれる。相手にその内容は伝わらないかもしれないが、あなたの存在は必ず相手に伝わり、心のどこかに残るはずだ


解説に引用されたエッセイより