ARIEL(4)/笹本祐一/朝日ソノラマ文庫

ARIEL(エリアル)〈4〉 (ソノラマ文庫)

(前略)
アニメファンとの共通言語を内包する文体で、読者の支持を得てきた作者により執筆の際に提示された基本設定がこれである。
キーワードは、メカ、美少女、爆発……
まさに、そのころ流行していたアニメの一傾向のストーリーを小説というメディアで展開できないだろうか?という試みであったといえるだろう。そして、そのために必要なのは、雑誌掲載時におけるヴィジュアル面での強化であった。
文章での表現がなされるにしても、そのキャラクターがどんなスタイルをしているのか?登場するメカがどんな活躍をするのか?を観てみたいっ!!という読者の要求が存在する。そのニーズに応じたイラストが重要なファクターとなってくるのである。
(中略)
女性型巨大ロボのデザイン、主人公の3人の少女たちのキャラクター……etc、著書・笹本祐一鈴木雅久の間で連絡がとり合われ、進行していった。
それは、作家によって書かれた文章がすでにあり、それにイラストレーターが描いた絵がついて完成するという、従来の小説誌の仕事のシステムにはなかったもので、まさに企画といってもよいものだった。
(中略)
そう、『ARIEL』は読むアニメといってもよいだろう……。
フィルムと活字というメディアのちがいこそあれ、『ARIEL』の送り手側は、受け手である読者に対し、各話の読後感をまるでアニメを見終わったときと同じような味わいを持てるように心がけていた。
バラエティある各話のエピソード。それに新しく登場してくるキャラクターは、必ずといって良いほどイラストとして描かれる。普通なら一枚のイラストとして描かれる場面を分割して描くモンタージュの効果(ソノラマ文庫『ARIEL(1)』P194〜197参照)。
『ARIEL』が常に狙っていたのは、文章とイラストの相乗効果によって生みだされるものを創りあげることだった。
もちろん、誌上で展開されるアニメとしてのムードを出すために、さまざまな仕掛けも用意された。シナリオのようなシーン別による本文の構成。エピソードとは独立したアイ・キャッチ風の扉イラストとまるで主題歌のようなアオリ文句。第1話において、メインとなるARIELの活躍場面のイラストが少ない(これは、TVのロボットアニメの第1話・初号試写の後に、スポンサー側の人間が言うような意見だ!!)ことの反省として、第2話に見開きで描かれた、ARIELの新宿大破壊のイラスト(『ARIEL(1)』P136〜137参照)。ファンへのサービス精神の表れである。
巨大ロボット小説『ARIEL』で、作家・笹本祐一イラストレーター・鈴木雅久が、活字とイラストの関係において、新たなる方向性を示そうとしたことは事実である。
それが、この『ARIEL』においてのみのものであるのか、それとも、これからの小説におけるひとつの流れになっていくかの結論を出すには、もう少し時間が必要とされるだろうが……とにかく、大ゲサに言ってしまえば、新たなる工夫がこめられた作品が、新たなる感動を呼ぶ―――その内容がシリアスかギャクかはともかくとしてだ―――と言ってしまってもよいだろう。