薬師寺涼子の怪奇事件簿 魔天楼/田中芳樹/講談社文庫 

魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)

あたしは無欲な人間だからね。欲ばりどもみたいに、世界を平和に、とか、全人類を幸福に、なんてだいそれたことは願わないの。あたしひとりが幸福なら、それ以上のことを要求しないわ。謙虚でしょ?


「あたしの車をよけきれないような奴に、運転免許を与えるな!」「あたしに逆らう奴に人権などない!」などと言い放つ、ドラキュラもよけて通る、通称"ドラよけお涼"こと薬師寺涼子。彼女は、某天災もとい天才美少女魔道士の魔力を財力権力学歴その他に変え、現代社会に送り込んで、警察という組織の中にぶちこんで、10歳くらい年を取らせ、ついでに胸にいく栄養を少しだけ多くしたパロディ的な存在ってことを聞いて、どんなもんかなーと思って手に取ってみた。意外と面白かった。舞台が我々の住む現代社会ってことで、傍若無人度がアップ。「夏の魔術」みたいな主人公より、こういったぶっとんだ主人公のが、読んでて不快感はない。ただ、語り部たる泉田クンには、朱に交われば……を自認したりせず、もうちょっと涼子を止める側に回ってもらわないと、バランス悪いかなあ。


パロディ元のほうは、いくら強いとは言ってもまだ15歳で、物語が進むにつれて人間的な苦悩とかも見せるようになるんだけど、この主人公にはそういうのあんまりなさそうね。語り部が主人公じゃないってこともあるんだろうけど。